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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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第5章

 
 
 

何だかんだで、クィディッチ決勝戦前夜になってしまった。
一部の選手たちは、プレッシャーを受けているからか、
妙なノリが入ってしまっている。
特に要のシーカーであるハリーは、緊張で青い顔をしていた。

ふい肩を叩かれたハリーは、驚いて振り返る。
そこには、以前大広間でぶつかった生徒が立っていた。

「はい、紅茶だよ。ハリー」
「あ……ありがとう……」

温かな紅茶を受け取って、ハリーは紅茶をこくりと飲む。
――結局の所、ハリーは目の前の彼の名前を思い出せずにいる。
3年もの間ずっとクラスメイトだったというのに、今更
“名前何だっけ?”と聞くのは失礼だと思う。

「緊張してるね」
「え……?……そりゃあ……決勝戦だし」

ふいに彼がハリーに話しかけてきて、ハリーは肩を落としながら
答える。
もちろん、試合の全てが自分の肩にかかっているわけではない。
だが、シーカーというポジションの責任は決して軽くない。
ティースプーンで紅茶をぐるぐると掻き混ぜながら、
彼はゆっくりと落ちついた声で言う。

「そうだね。でもハリー、ハリーはちゃんとファイアボルトを
 乗りこなすことが出来るんだから、身構える必要はないさ。
 ハリーには怖いものなんて、何一つないんだ」

微笑みながら真剣な目で彼にそう言われて、ハリーは何だか
すごく照れくさくなった。
対して、どう答えていいのか分からなくなる。

彼はそんなしどろもどろなハリーの頭を、ゆっくりと撫ぜた。
目を見開きながら、ぱっと顔を上げるハリー。

「僕は、ハリーが本当に素晴らしいシーカーだって知ってる。
 試合の結果を気負うばかりじゃなくて、楽しみながら思いっきり
 飛んでくればいいよ」
「あっ……えっと……う、うん」

頷くハリーに、彼はにっこりと嬉しそうに微笑んだ。
そして他の選手たちにも明るく声をかけた。

「フレッド、ジョージ!向こうに君たちの人間ブラッジャーを
 叩き込んであげるといい!ウッド!守護神の力でゴールに堅い
 バリアを張るんだ!アンジェリーナ、アリシア、ケイティ!
 華麗なテクニックの舞いを見せてくれ!僕らグリフィンドールは
 一心同体だ!!」

すると瞬く間に、その場の雰囲気がガラリと変わっていく。
から元気に見えた双子は、安定したいつものテンションに落ちつき、
ウッドは神経質なフォーメーションの確認を止め、女子3人組も
強張った顔を解いてにっこりと笑いあった。
それを見ていたハリーも、緊張していた体が少しずつ和らいだ。

何故、こんなにも彼の言葉は響くのだろうか?
何故、彼の笑顔にひどく安心するのだろうか?

(分からないけど――明日は絶対に……全力を出しきって頑張れる)

ハリーはそう信じることが出来た。





翌日。

グリフィンドールの観客席で、ジェームズはとても打ち震えた。
もちろん、久方ぶりに生で見るクィディッチは最高である。
何せ息子もいる自分の寮のチームで、相手はあのスリザリン。
その興奮を身を持って体験したことがあるのだから、尚更である。
だが、ジェームズが打ち震えている理由はそうじゃない。

『このデカ物っ!……うわっ、マクゴナガル先生落ちついて!
 すみません!!』
『リー!真面目に中継が出来ないなら、私に貸しなさい!』
『まま待って下さい!あ、ウィーズリーがブラッジャ―を
 跳ね返しましたー!!』


(どうして――どうして僕たちの頃の実況中継は、今みたいに
 面白くなかったんだ!)


これほど面白い中継が学校で聞けるとは、ジェームズは
夢にも思っていなかった。
しかも、マクゴナガル先生の声までオマケについてくるなんて。

「ずるいじゃないか」

ぽつりと呟く声は、周りの歓声にもののみごとに消されてしまう。
けれど熱狂して盛り上がっている歓声には、ジェームズでさえ
大人気なく飛びこんでしまいたい気分がある。

『行け、アンジェリーナ!行けーっ!!』

アンジェリーナがクアッフルを抱えてゴールに失踪する。
ブロックしようと突っ込んでくるスリザリンチームに、
高速でハリーが突っ込んでいく。
ハリーに気がついたスリザリンチームは、慌てて全員が散った。
それによってアンジェリーナは目の前のゴールキーパーにも
マークされない状態になり、クアッフルを思いっきり
ゴールへと投げつけた。

その時、ジェームズは直感で素早く芝生の方へと目線を移す。
そこにはきらきらと金色に輝く球体。

「スニッチ!!」
『アンジェリーナ、ゴールッ!!またもや華麗に決めました!!
 グリフィンドールのリード……ああっ!?』

驚愕したようなリーの声。
生徒も教授も一斉に別の方向を見る。
スニッチを見つけて急降下しているマルフォイの後ろを、
ハリーがとてつもない速さで追っていた。

そのスピードで、ハリーはリードしていたマルフォイとの距離を
みるみるうちに縮めていく。
マルフォイの箒に近づき、ぴったりと追いつき、真横に並ぶ。
ジェームズは思わず、歓声に負けないくらい大声で叫んだ。

「取るんだ!!ハリーなら取れる!!」

ハリーは箒から身を乗り出す。
ぐっ、と両手を突き出して――

「やった!!」

高々とハリーがスニッチを掴んだ手を空に振り上げる。
瞬間、会場の歓声が爆発した。





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