忍者ブログ

黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

第6章

 
 
 

ジェームズは息子の栄誉を噛み締めながらも、
待ち構える試験の勉強に苦しむ生徒を助けまわっていた。

学生として過ごしたのはすでに何年も前のこと。
だが、ホグワーツを主席を誰にも取られず卒業しているので、
3年生の問題ぐらいならまだまだ余裕の体で教えられる。
ちなみに次席は、シリウスとセブルスの2人。
とはいえ、2人は次席の座をいつもいつも争っていたが。



そして、ついに試験の日がやってきた。
ちょっとした魔法で生徒だと認識させているジェームズは、
もちろん試験などやらなくても困りはしない。
だが、何故かジェームズは2つの試験に参加していた。

ひとつは魔法薬学の試験。
誰よりも早く、完璧な混乱薬をちゃんと作ってみせると、
その完成度の高さにセブルスを渋い顔をさせた。
もうひとつは闇の魔術に対する防衛術の試験。
試験の途中のルートまで全て完璧にこなしてきたジェームズは、
最後のトランクの中にゆっくりと入る。

すると、急に目の前の赤毛の女性が忽然と現れた。

「……リリー」

彼女はいつもの様子とはまったく違う。
輝く緑の瞳で、冷たくジェームズを睨んでいた。
そして彼女はすっと息を吸い込み、はっきりと口にする。

『ジェームズなんて大っ嫌いよ』



「違ぁぁあああうううッ!!!!」

思わずジェームズは思いっきり叫んだ。
睨んでくるリリーに泣く泣く、ぐっと拳を握った。

「僕のリリーはそんなことは言わないっ!本物のリリーなら、
 “ジェームズ愛してるわ” って優しく暖かく言ってくれる!
 僕は惑わされたりしないぞ!リディクラス!!」

ジェームズはまるで学生時代の時に戻ったかのように、
熱く熱く語ったあとで思いきり杖を振るった。
目の前にいるのはボガードで本物のリリーではないのだから、
当たり前なのだが。

ボガード・リリーは姿を変えて、ふさふさの猫耳帽子をかぶった
ふわりとしたメイド姿のセブルスに変わった。
それをすかさずカメラに収めるジェームズ。
入った時とは別人のような笑顔を浮かべ、トランクの外へ出た。

そんなジェームズにリーマスは笑って「満点だ!」と告げる。
しかし、どこにその評価を書いたらいいのか分からず、
リーマスは混乱する。
その様子に、ジェームズはトンと彼の背中を叩く。
すると、混乱した表情を穏やかな表情に一転させたリーマスは
次の生徒の名前を呼んでを始めさせた。

セブルスの時は触れられなかったので、普通に力を使った。
試験は受けたが、これでジェームズの評価が表に出ることはない。
ジェームズはただ親友のリーマスとセブルスの試験が
どんな物なのか、好奇心で受けてみたかっただけだったのだ。





ある夜、ジェームズはリーマスの部屋に向かって歩いていた。

『ジェームズ』

ふいに聞きなれた声に驚いて立ち止まる。
聞き間違いなどではなく、確かに自身の中に響いたあの方の声。

「ケイ様?」
『ゆがみは大きくなりつつある。時の長針は静かに動き、
 秒針はすでに刻み始めた』
「――分かりました、ありがとうございます」

それが何のことか瞬時に理解するジェームズ。
すぐさま、廊下を走り始める。

リーマスの部屋にノックもせずに飛び込むと、机の上に
置いたままの羊皮紙を手に取った。
ハリーから預かっていた“忍びの地図”だ。
暴れ柳の所へ目を走らせると、そこに役者は揃っている。

手を振るって力を使った。

「空間転移」

ゆらりと視界が揺れたあと。
すでにジェームズは、暴れ柳の通路に立っていた。

「さて――それじゃ、きっちりとゆがみを直しにかかろうかな。
 ……本当はこれが、本業ってわけじゃないんだけどね」

ジェームズが扉の前に立ちはだかる。
その時、中からシリウスの憎しみにも似た怒鳴り声が爆発した。

「ハリーに話しかけるとはどういう神経だ?顔向けが出来るか?
 この子の前でジェームズのことを話すなんて、どの面下げて
 出来るんだ!?」


(ああ……ようやくピーターが姿を現したのかい。)

ジェームズは目を細める。

君が裏切っていたことは、本当は分かっていたんだよ。
だけど『守人』の情報を明かさなれば……君がもっと仲間を
信頼して、共ににいてくれればと――。

結局は、誰ももう戻れない所まで来てしまっているんだね。
なら僕は……今ここでゆがみの原因を正すだけだから。

シリウスとリーマスは絶対にやるだろう。
だから止めなくちゃならない。
馬鹿には言わなきゃならないことが一つある。
何より、このままにしてはおかないよ。

ここに来た意味。
それは今まさにこの扉の向こうにあるのだからね。

ジェームズは半壊するドアに、手を差し伸べた。



「やめて!」





NEXT.

拍手[0回]

PR