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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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プロローグ

 
 
 

――ぽう……。


淡い光が時と共に、彼方へと流れてゆく。
男性は見えなくなるまで、しばらく灯を見つめた続けたあと、
背中に広がっていた羽根を虚空へ溶けるように消す。

終わる事のない時空の流れ。
切れる事のない輪廻の流れ。

男性は小さく首を振った。

「ジェームズ」

ふと、後ろから声をかけられる。
男性――ジェームズは驚きながら振り返った。

「ケイ様?何故、ここに……」

ジェームズが驚くのも無理はないだろう。
何故なら多忙を極めるジェームズの上司である彼が、
いつのまにか後ろへと立っていたのだから。
それにここは、彼の宮殿ではない。

彼はくすくすと笑いながら、長い髪を揺らして近づく。
子供にするかのように、ジェームズの頭を優しく撫でた。

「見つけたんだよ。リリーの眠ってしまった原因をね」
「本当ですかっ!?」

――しまった。
ジェームズが我に返って青ざめたのは、告げられた言葉に
思わず上司の手を振り払って詰め寄ってしまったあと。
けれど彼は少しも怒らず、重々しく頷いてみせた。

ジェームズの妻、リリー。

彼女は数日前、突然意識を失って倒れてしまった。
今も奥の部屋のベッドの上で、静かに眠りつづけている。

「ああ、“碧”での時空のゆがみが原因だったようだ。
 あの子は一番、“碧”での影響を強く受けやすいからな……」
「……“碧”……」

彼の言葉に、ジェームズは顔を強張らせてぽつりと呟く。
碧の術界――それは彼らの間での通称で、実際の名称は違うが
“魔術界”と呼ばれている世界だ。

そして、ここに来る前にジェームズとリリーがいた世界であり、
自分の息子や、親友達や仲間達がいる世界だ。
その世界に――妻の眠る原因がある。

きっ、とジェームズは顔を上げる。
自分を見下ろしてくる上司へ、意志を告げた。





NEXT.

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