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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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23

 
―現れた五人―

 
 

「ルイ……ごめん……ね……」

その瞬間。
ルヴィリオの体から膨大な魔力の渦が弾け飛び、
辺り一面とゼロスとを巻き込んだ。










「ちょっと! ルヴィったら聞いてるの!?」
「うん、ちゃんと聞いてるよ。またガウリスが君のから揚げを
 横から取ったんだろう?」
「ルヴィ、お前さん、まったく聞いてないじゃないか……今のは
 リオナが俺のハムをとったんだぞ?」

「同じ事じゃないですか。はあ……毎度毎度、食事のたびに
 本当に私たちは恥ずかしいですよねえ? ルイ」
「レイ、何か言ったかしら?」

「あーあ……お兄ちゃんてば、もう……」
「まあ、いつもの光景だね」

そこは森の中だった。

ただ少し今までと違っているのは、ラルトフとの戦いで抉れていた
大地が元に戻っていることと、土に埋もれていた神殿が
綺麗になっていることだけだ。

――いや、よく見れば違う場所の、神殿の前だ。
作りこそは同じもののようだが、場所は開けた森の中にあり、
先ほどまでの場所ではなくなっている。
 
そして目の前に座った五人の男女が繰り広げる微妙な会話が、
まったくもって戦闘があったという空気をぶち壊していた。
 
その一人は、先ほど混沌に落ちたはずのルヴィリオ。

一人は、漆黒の長髪に赤眼、赤いローブをまとう男の魔道士。
一人は、輝くみつあみの金髪に、腰に剣を携える男の剣士。
一人は、濃い栗色の長髪に、魔道具を装備した女の魔道士。
そして最後の一人は、金髪を一つにくくった少年だった。

剣士と女魔道士はソーセージがどうだの魚がどうだのと
いがみ合いながら、呆れて口をはさんだ男の魔道士を睥睨し、
隣の少年は呆れながらも楽しげにくすくす笑っていた。

「グガァアアアッ!!」

ふいに。
にぎやかな雰囲気を切り裂いて、暗い雄たけびが森に響く。
茂みから飛び出してきたのは三匹のレッサーデーモン。
火炎が一匹の口から吐き出された。


ゴゥ!!


四人はくつろいだ様子から、瞬時に散開する。
すると、リオナと呼ばれた女魔道士が怪訝な顔で悪態をつく。

「ったくもう!! 食事の時くらいは少しでいいから静かにしていて
 ほしいものよね!!」
「ほんとだよな。俺もまだ食べかけだったんだぞ」
 
またもや、始まるおとぼけの会話。
それにまたも呆れて、レイと呼ばれた魔道士が肩を落とす。

「そんなこと言っている場合じゃないでしょう、二人とも」
「たった三匹だからすぐ終わるよ、レイ。少しだけ待っててね、ルイ」
 
苦労を背負い込んだような彼の背中をぽんぽんと叩き、
ルヴィリオは杖を軽く構えてレッサーデーモンを見やる。
しかしふいに振り返って、にっこりと笑んだ。
 
ルヴィリオが見せた笑顔は、ゼロスに向かって見せていたものと、
まったく同じ種類の笑顔だった。
 
「うん、大丈夫……分かってるよ」
 
唯一、ルヴィに頷いたルイという少年だけが四人から
少し離れた場所へと取り残された。
 
その顔は恐怖とは違い、また別のもののように感じる、
硬く強張った表情が浮き上がっていた。

まるで、何かの予兆を見たかのように。

 
 
 
 
NEXT.

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