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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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22

 
―独り言―

 
 

「な……貴様、何故……!!」
「……何故、だろう……魔族の君、アストラ……サイドへ、
 逃げられた……よね……」
「……貴様……」

ゼロスの目が見開く。
つまりゼロスを魔族であると見破っていたというのだろうか、
この人間は。

それは、いつから。
それは――最初から……?

ずるりと、地面に崩れ落ちたルヴィリオは、荒くも弱々しい
呼気を繰り返す。
そのたびに、口腔から頬へ赤い糸が何本も伝い落ちた。

「な、ぜじゃ……ないな……。ほんと……は、君に執着し……
 わけ……分かっ……て、……たのに……」
「執着――?」
「分かっ、て……た……」

ルヴィリオは紫苑の瞳に、ずっと空を映している。
言葉も話しかけるそれではなく、ただただ独り言のように。
血に濡れた唇が、緩く緩慢な動作で弧を描く。

それに、ゼロスは何故か苛立ちを感じた。

「ね……ゼロス……ど、して……そのすが、た……?」

ふと相貌が空からゆっくりと横にずれ、紫苑の中にゼロスを映す。
力のなかった手の平が浮き上がり、頬を撫ぜた。
ゼロスは、そんな問いに答える気は毛頭なかった。

そのはずなのに、口が緩やかに動く。

「こんなものに意味などない」
「……はは、や……っぱり……そう、なんだ、よね……。
 でも……ゼロス……わ、たし……には……ひつぜ……」
「……必然だと……?」

――何故だ。
   死にゆく無力で愚かな人間に、何故問いかける。

しかしルヴィリオは問い返しには答えず、またゼロスに力なく
笑みながら問いかけてくる。

――その笑みは、何だ。

「ゼ、ロス……私を……ころ……し……?」
「――獣王様に与えられし使命は、『計画遂行のために邪魔となる
 力を持つ人物がいる。その人物を割り出し、断定しだい報告』――。
 私に、殺せ、という使命は下っていない」
「この世、は……全て必然だか、ら……。君のすが、た……昔……
 守れ、なかっ……子と、同じ……姿、……っ!!」


ごほッ!


一瞬だけ、呼気が赤い霧となる。
頬を撫ぜていた手から熱が徐々に消え、ぱたりと地に落ちると
瞳の光が少しずつ少しずつ遠くなっていく。

しかし、浮かぶ笑みは消えない。

この浮かんでくる焦燥のようなものは、何だ。
自分のものなのに、思考が理解出来ないのは何故だ。

「そう……あの子を……ま、もれな……ったから……たしの、
 この力は……代償の……ちか、ら……」

まるで自嘲のような、受け取る相手がいないような独り言。

「……こ、れに……呑みこ……れず……いたら、あいつ……
 あの子……き、っと……だいじょ……だったのに……」


声が掠れる。


「……イ、……闇、呑み……まれ、ちゃいけ、な……から……
 あの子の……ために……なら……ない、よ……」


薄れる光。


「と、めら、なかっ……ウリス、リオ……レ、イ……を……」


もう何も映らない。


「……ロス……さい、ご、君の盾……なれ、よか……っ……
 た、とえ……、君……にく、い、闇で、も……」


答えはもう聞けることなく――。





「ルイ……ごめん……ね……」





NEXT.

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