―出会うもの―
――この辺りにするか。
そんなに深くはない森の中に、ふっと人影が忽然と現れる。
年の頃は 7~8 歳くらいの金髪金眼の少年だろうか。
もちろん普通の少年が魔法も何も使わず、虚空から現れるわけがない。
少年は、この場所に相応しいと思ったゼロスの変化した姿だ。
ついっと辺りを見回し、ゼラスが与えた使命を思い出していると、
ふいにガサリと茂みが揺れた。
「ガアァアアッ!!」
「…………。」
咆哮にちらりとそちらに目をやる。
レッサーデーモンが1匹、ゼロスに向かって突進してきた。
その突進をひらりと交わして、怪訝そうに目を細める。
――邪魔だな。
すっ、と人差し指を真っ直ぐ向けて――
ちゅどんッ!!!
「…………?」
いきなり消滅したレッサーデーモンを、訝しげにゼロスは眉を潜めた。
腕を持ち上げただけで、何の力も突きつけてはいないのに。
今度は背中の方の茂みが音を立て。
ゼロスは今度はそちらへ、ゆっくりと目線を向けた。
「こんな所まで逃げ込むなんて……。まったく、野良は手間を
とらせてくれるよね……」
1人の青年がそこに立っていた。
こげ茶色のマント、ゆったりとした薄茶色の上着、藍色のズボン。
腕と足首、そして腰には黄色の紐がきっちりと結んであり、
手には宝玉のついた木の杖を持っている。
トントン
杖を地面へ打ち付け、青年は溜息をつきながら呟く。
しかしその表情は、小さく静かに微笑みを浮かべていた。
「――おや? 子供……?」
その場にいる自分以外の存在に、青年はようやく気がついた。
ゼロスはただ黙って、青年を見上げているだけ。
「……君、どうしたんだい? この森は最近デーモンが多発していて、
危ないから誰も近づかなくなってるんだけど……」
「……迷って」
「……迷う?」
ぽつりと呟いたゼロス。
青年はきょとんと首を傾げた。
NEXT.