―誕生と使命―
意識が広がる。
それはゆっくりと、ゆっくりと静かに広がっていった。
意識の周りを囲んでいるのは、全てが深い闇。
今この瞬間 “自我” が存在している場所は、この闇の中だ。
真っ暗な……。
それでもこれが当たり前なのだと、理解している深い闇。
何故ならこの意識は “自我ある闇の者” によって、
新たに造り出された “自我ある闇の者” だから。
「目覚めよ」
ああ、この音……。
声は新しい “自我ある闇の者” を造った “我が主” のもの。
何故なのか金髪金眼の人間の姿を保っている。
―― “闇” は魔族と呼ばれる存在。
“自我” を意識した時から、すでに了承している。
“魔族” に造りだされた “魔族” 。
その意識に反する意識を持っているはずがない。
“自我”はそう造られているのだから。
姿形も。
その魂も。
意識も。
存在全てが。
「……ふむ……」
“我が主” は考察するように、値踏みするように唸る。
“自我” を見下ろして、ゆっくりと目を細める。
しばらくした後ですっと腕を持ち上げ、 “我が主” が“自我” へ
力を入れ込み始めた。
「そうだな……。お前の名に私の名の半分を与えよう」
“自我” は元から受け継いでいた力に、さらに力を吸収していく。
吸収した力は重なり合って、ぐんぐんと一つのまとまった形に
変化していった。
口はしに小さな笑みを浮かべ、 “我が主” はそれを見ている。
そして “自我” は忽然と一つの姿をとった。
意識が生まれ出でた直後のため “我が主” のように、
人間の姿ではない。
人間の言葉で説明しようとするならば。
黒みに紫がかった三角錐。
「お前の名はゼロス。この私……獣王ゼラスの部下、獣神官ゼロスだ」
――はい、ゼラス様。
「早速だが、お前に使命を与えよう」
――何なりと。
NEXT.