―暴走―
「あ……あああ……セルネルーーー!!!
セルネルぅぅううううっ!!!!!!!!!!!!」
ラルトフはセルネルの元へ走り出す。
しかし――すでに少女の姿はそこにはなかった。
ただ、暴走した虚無に一部が喰われてしまった地面が残るだけ。
その様子を、ゼロスは冷めた目で見やる。
呆然とその場所を見ていたラルトフ。
ふいにゆらりと体を動かした。
「…… セ ル ネ ル 」
一瞬足元を見て――ギッ! と、ルヴィリオをきつく睨む。
“セルネルを滅ぼした”。
ラルトフがそう考えた、一番の人物を。
「お前が……!! お前がぁああーっ!!!!」
ヴヴンッ!!!
ラルトフは黒い波動球が両手に溢れさせ、空に放り上げる。
間、波動球は豪雨のようにルヴィリオに向かって突き刺さる!
けれどルヴィリオはその場を動こうとはせず。
杖を地に打ち付けて叫んだ。
「雷の咆哮!」
バチバチバチバチバチバチ!!!
幾つかの雷撃が、向かいくる波動球を瞬く間に次々捕らえては
次々と消し去っていく。
しかし、波動球の全てを防ぎきれなかったようだった。
捕らえ切れなかった球は、ルヴィリオの立っている位置よりも
数メートルずれて大地を抉った。
その中の波動球が一つ、ゼロスに向かって落ちてきた。
ゼロスもルヴィリオと同じくその場を動かずに、すっと片手を
静かに動かして、向かってきた波動球を消しさった。
ラルトフはルヴィリオを殺す思いを最優先にしていて、
人間ではありえないことをしたゼロスは目に見えていないらしい。
「氷結の鋭利!」
ゴォオオオオオオオオオンッ!!!!!!!
ルヴィリオの周りに現れた氷柱の群れが、鋭くラルトフを
めがけて突進していく。
両手を広げたラルトフは、虚無でそれを消し去ろうとする。
―― ……ん?
ふと、ゼロスは眉をひそめた。
―― あいつから攻撃したのは初めて見るな……。
これまでに何度か、ルヴィリオが呪文を唱えずに魔法を
使う所を見てきたゼロスだったが、ルヴィリオは今まで
“自分が相手に攻撃をされてから” 魔法を使っていたはずだ。
だが、今しがたルヴィリオは攻撃を自分からしかけた。
――別に深く気にすることでも、ない、か?
辺りはラルトフの怒りの気配が充満している。
それに比例するように、瘴気がしだいに濃くなっていく。
「はああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
NEXT.