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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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16

 
―意外にも―

 
 

ルヴィリオと出会ってからゼロスは “意外” というものを
初めて覚えたと、そう言っても過言ではないだろう。
存在し始めてからまだ三日も経っていない。
しかし、否応にも経験は積み重なる。

だが、驚きよりもこうまでして “意外” に感じたのは
これが初めてだったのだ。



「やっほぉー♪ 久しぶりぃ♪」
「さっきぶりの間違いだけどね……」
「おやおや……」

神殿を出た場所に立っていたのは、先ほど消えてしまった
セルネルとラルトフ。
そう、意外にも再開はあっさりと早かった。

ラルトフはやはり無表情でこっちを見ているのだが、
セルネルがとても良い笑顔で手を振っているのは何故だろうか。
そして、ゼロスの隣で手を振り返すルヴィリオも。
何だろうか、この雰囲気は。

ゼロスは呆れ返る。

「さっき “今日はここまで” って言っていたから、今日じゃなく
 また今度来るのかと思ったんだけれどね?」
「事情が変わっただけだよ。別に不都合があるわけじゃないだろ?」
「それはそうだね」

ルヴィリオはあっさり、ラルトフの言葉に納得した。
何故かゼロスはこの場にいたくなかった。
こんなに、何故、と思うのもまた意外だったが。

三人から目を背けていたゼロス。
ふと、セルネルがその姿に気がついた。

「……あらぁ? あんた、誰なのぉ? さっき村にいなかったわよねぇ?」
「ああ、この子は私の弟だよ」

―― !?

いきなりといえばいきなりの、ルヴィリオの告白。
ゼロスは表情には出さずに、内心思いきり驚いてしまった。

「一緒に薬草を採りに来てたんだけど、村が変な様子だったからね。
 村に戻らず、ここに隠れているよう言っておいたんだよ」

にこにことそう説明するルヴィリオに、眉を寄せるゼロス。
するとラルトフがぽつりと言った。

「ぜんっぜん似てないけど……?」

――当たり前だ……。

「ああ、この子と私は母親が違っていてね。別々に暮らしていたけど、
 この子の母親が死んだから、私が引き取ったんだよ」

――よくもそんな嘘が、次から次へと思いつくものだ。

しかも、いけしゃあしゃあと言ってのけるのだ。
その軽さが余計に真実味を増している。
ゼロスとしては、人間と同格にされてたまったものではない。

だが、仮に本当であっても。
そんなことを敵に安易に教える内容ではない。

一瞬、セルネルとラルトフは顔を見合わせる。
そして値踏みするかのような目でじっとゼロスを見る。
そのあとで、ルヴィリオに笑った。

「その子……大事ぃ?」
「もちろん。私の弟だからね」

―― ……馬鹿な問いに答えたな……。

ゼロスは瞬時に、セルネルたちの思惑を察した。
笑っているルヴィリオに内心、そう呟く。
魔族がそんなことを聞いたあとにどんな展開が待っているか。
そんなことは、この男であれば分かるはずだろうに。



大事なもの――。
それがあるから人間は強いと聞く。
だが同時に、弱くもある。
それは弱点になる。

大事だと思うほどに、弱みになるのだ。



「そう……そんなに大事なんだ」

これ以上――

「……じゃあさぁ」

絶好の――



「「壊してあげるよ」」



エサはない。





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