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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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12


―さがしもの―




――冥王様の直属の配下か。誰も聞いてないのに自ら正式な
   名前を言うとは……よほど、自己主張が好きなようだな……。

彼らの出現に、ゼロスはすっとアストラル・サイドへ身を置く。
実際に会ったことはない……というより、上司であるゼラス、
神殿にいた魔族、レッサーデーモン以外には、創られてすぐここへ来た
ゼロスは未だ会ったことがないのだが。

人間の役職に置き換えるならば “同僚” というものになる。
今、その存在と鉢合わせてもまずいことにはならないのだが、与えられている
任務のことを考えると、面倒なことにはなるだろう。

「んー、でもさぁ……本格な検討はもうついてるんでしょぉ?
 フィブリゾ様の方が、確信があるっていうかぁ……」
「そうみたいだけどね。だけど、あまり見過ごせないみたいだし。多いほど、
 少ないほどってやつだろ?」
「まあねー。それよりぃ……前から思ってたんだけどぉ、あんた “けど” とか
 “だけど” とか、少しうるさいのよねぇ」
「僕は君みたいな “のぉ” とか “ねぇ” とか気持ち悪いよ?」

「何ですってぇ?」
「癖だけど?」

人間のような姿をしているが魔族である彼らは……見た目は10歳から
15歳くらいの子供の姿を装っている。
というか、まるっきりその姿が似合っている。
ぶつぶつとセルネルが不満そうに言うと、ラルトフはひょいっと肩を竦めて
答える。

「まあ、それはおいといてぇ。セルネルちゃんの強さを見せるためにこう……
 派手ぇ! に最前線にいたいっていうかさぁ……」
「あのね、僕らが最前線って、ありえないんだけど?」
「分かってるわよぉ! ほらぁ、さっさと探してくわよ、ラルトフ」
「……セルネル……分かってるんだったら、ごちゃごちゃと言わないで
 ほしいんだけどね……」

コンビネーションが良いのか悪いのか。
セルネルとラルトフは黙ることなく、幼い子供のような言い合いをしながら
村の中へと歩き出す。

――何を探す……?

ゼロスはその後ろ姿を目で追ったあと、すぐに眉をひそめる。
森の方に、一つの影がうっすらと見えたのだ。

それは濃い色を増していき、だんだんとその形を作っていった。

――……まだ1時間も経っていないな……。となれば村人の悲鳴に
   気がついたか、立ち上る煙に気がついたか……。

そしてその影……。
ルヴィリオが、森の中から村へとはっきり姿を現した。
村の中に入ったルヴィリオは、ゆっくりその惨状を目に映していく。

「……ゼロスがいないな……」

そのあまりにもぽつりとした言い様。
何故か力が抜けるような感覚に、ゼロスは陥る。
自分が住み着いている村がこんな惨状になってしまったというのに、
第一声がそれでいいのか。

「あれ? まだ生きてる人間がいるけど……ってことは……」
「えっ! それじゃあ、あいつがそうなのねぇ? きゃっほーぅ! よーやく
 見つけたじゃないのぉー!」

ふと、ラルトフがルヴィリオを見つけて驚く。
そしてセルネルも同じようにしてから両手を大きく振り上げて、
きゃいきゃいとはしゃいで喜んだ。
ルヴィリオはその様子を、じっくりと見てから聞いた。

「まあ……この村の惨状は君たちが仕掛けたレッサーデーモンが
 やったんだろうね? ……さて……私に何か用かな?」
「用?」
「用……ってねぇ」

ルヴィリオの言葉に、セルネルとラルトフが顔を見合わせた。
そして、にぃっ、と子供のような無邪気さに似せかけて、
濃厚な深淵の笑みを浮かべた。

「あんたって、人間にしては変な力を持ってるんでしょぉ?」
「便利そうだとは思うけど、僕らのためには使ってくれなさそうだからさ。
 ちょっと死んでほしいんだけどね」
「……なるほどね……」

ルヴィリオは彼らに微笑みかけた。





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