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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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―上等―

 
 

フィリアのはらわたが煮えくり返っていたのは、
誰の目から見ても明らかだった。
しかし、元々のセイルーンでの用事を先に終わらせなければ
いけないという彼女は、しぶしぶながらヴァルを連れて
セイルーン城に行くことにした。

「本当にいいですか、リナさん? ヴラバザード一派が、
 リナさんに対して今度は何を考えているかは、わたくしにも
 分かりませんけれど!」
「わーかってるわよ! どうせろくなことじゃないんだろうし」
「そうですけど……」

食堂から広場へと出ると、フィリアはリナに詰め寄って
そう言い聞かせる。
リナもリナで、前にあったことを思い出しているのだろう。
かなり苦りきった表情でフィリアを押しとどめた。
ヴァルは腕を組みながら溜息をつく。

「……俺もフィリアに同感だな。まあ……とはいえ、だ。
 あんたのことだから、大丈夫だとは思うけどよ」
「あったりまえじゃない!!」

リナが胸を張ると、フィリアはようやく落ち着いたらしい。
最後にじろりとゼロスを睥睨してから、一礼してヴァルと
一緒に人混みの中へ消えていった。





「さーて、と」
「リナ……結局俺たちはどうするんだ?」

首を傾げるガウリイ。
リナは空を見上げながら、ぽりぽりと頬をかいた。

「んー、どーするったって……。向こうの目的が何なのかも、
 分からないんじゃねー」

リナはゼロスを振り返る。

「あんた、今回のことで何か知ってることとかあるの?」

絶対に秘密などは許さない。
燃えるようなリナの瞳が、そう告げている。

さすがにゼロスもそれをちゃんと感じとったのか、
いつものようにふざけた態度を取ったりせずに肩をすくめて
多少困ったような顔をした。

「これでも僕も驚いたんですよ? 諦めが悪い方たちだなあって」
「あっそ……」
「きっとリナさんを殺しておけば世界は平和に~って魂胆じゃ
 ないですかねえ?」

とてもあっけらかんとしたゼロスの言葉に、リナは憮然とする。
しかし三人の様子を黙ってじっと見やっていたリヴィに気がつくと、
我に返って少しだけ慌てた。

リヴィとしては、リナがどんな判断を下すのか興味があったので、
ずっと黙っていただけなのであるが。
けれどリナは、途方もない御伽話をしたせいで、幼いリヴィが
混乱しているのだと勘違いしたらしい。

普通の子供ならば、混乱して当たり前な話であろう。
今日びヴラバザードの名前を知っている者など、神官や巫女、
歴史を研究している者くらいなのだから。

「ええっと――」
「僕も一緒についていってもいいですか?」

にっこりと笑顔を浮かべながら問いかけるリヴィに、
ぎょっとリナは目を見開いた。

「え、あのね、あたしたち……」
「僕は急ぎの用事がありませんし、ルナさんから伝言を
 預かってきた身として、ヴラバザード一派が何をするのか
 気になりますから」

ちらり、とゼロスが開眼して見下ろしてくる。
もちろんリヴィは気づいていたが、あえて気づかないフリをした。
意識さえ、そちらへ向けていないようにしむけてみると、
ゼロスはあっさりと騙されてしまう。

それで大丈夫かなどと考えてしまうのだが、ゼロス自身は、
ちょっと騙された所でまったく痛くも痒くもないだろうと思う。

「ううーん……」
「別にいいじゃないか、リナ。リヴォなら大丈夫だって」
「リヴィです。ガウリイさんの言う通り、僕も魔法が使えますから、
 自分の身は自分で守れますよ?」

ひらひらと手を振って見せる。
リナはしばらく沈黙して迷っていたが、じっとリヴィを見つめてから
深く息を吐いた。

「分かったわ。危なくなったらすぐ逃げる、それでいい?」
「構いませんよ」
「オッケー。じゃ、どこで仕掛けてくるか分からないし、とりあえず
 セイルーンを出ましょうか」
「おう」

リナが吹っ切ったようにそう言うと、
一向はきびすを返して街外れへと歩き始める。

「ではリナさん、どちらに向かいますか?」

ゼロスがにこにこと問いかける。

「……そうねえ……ラルティーグの方にでも行ってみましょうか。
 どうせ向こうがどこにいるかなんて、あたしは知らないし」
「おお」
「分かりました」
「さーて。かかってくるならかかってきなさいってね」

リナは太陽に向かって挑むような目で笑う。
リヴィはゼロスに気づかれないよう、密かに微笑んだ。





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