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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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16

 
―終止―

 
 

次の日。

リナたちが宿屋から出て、森の方とやって来る。
広場の手前で待っていたのはリヴィ、そして結局アストラル・サイドに
戻ろうとしなかったゼロスだった。
さも当たり前のように立つゼロスに、リナは不審そうな目を向けた。
しかし、リナの視線にゼロスはまるで気がつかないという態度をし、
飄々とした体でリヴィに話しかける。

「それで、どうするんです?」
「まあ、少しは骨身に染みたかなと思うことにしようか」

リヴィは虚空から杖を出現させる。
一歩前に出る際に隣から甘いですねえ、と呟く声が聞こえてきたが、
それには何とも答えない。

軽く杖を回してからトン、と静かに地を打つと、竜達を覆っていた
紅の濃霧が散っていく。
現れた竜達は本性の姿をさらけだし、全員が目を回して、
口から泡を吹いて倒れていた。

「リ、リヴィオル殿、何をしたのですか?」
「ん?」

恐々と問いかけてくるミルガズィアに、リヴィは苦笑して肩をすくめた。

「うーん、少し幻を見せていただけなんだけどね」
「幻……ですか?」
「神魔戦争時代の私の記憶をちょっと」



どしゃっ!!



大きな音にリヴィが振り返る。
リナとミルガズィア、メフィの三人が地面にコケている。
ガウリイはやはりきょとんとしていて、ゼロスは盛大に顔を
引きつらせて固まっていた。

確かに経験がない戦争ではあるものの、ゼロスとしてもあまり
見たくはないものであろう。

「し、神魔戦争て……」
「いやあ……でもほんのちょっとなんだけどね。私が最終地で
 ルビーアイと戦っていた時のことぐらいしか」
「充分大事でしょうがあああああああ!!!!!!」

首を傾げるリヴィに、思わずといったようにリナは叫んだ。
ぜえぜえと肩で大きく息をついているリナに、リヴィは少しだけ
不思議そうにしながら首を傾げる。

「本当にちょっとだけなのにね?」
「……そういう問題ではありませんよ」
「あれ? もしかして、ゼロスも見たかった?」
「…………はあ。ご遠慮申し上げておきます……」

まして、スィーフィードの記憶であるなら余計に。

ゼロスの言葉の裏にある本音に、もちろんリヴィは気づいている。
気づいていてわざと問いかけたのだ。
ゼロスもリヴィがからかっていることにすぐ気づいて、じろりと
睥睨してみせる。
だが、リヴィはただ声なく微笑んでみせただけだった。

「さてと。私はもう十分なんだけど、リナさんはどうする?
 成敗しとく?」
「え? うーん、そうねえ……」

杖を回しながら、リヴィがリナの方を振り向く。
多少リナは考え込むような顔をしたが、すぐに溜息をついて
首を横に振ってみせた。

「……何かリヴィのことで、どうでも良くなっちゃったわ。そいつら、
 すぐには復活出来ないんでしょ?」
「うん、この様子では、とてもすぐにはね。まったく……昔より
 根性がなくなった気がするよ」
「神魔戦争の記憶など容赦なく見せつけられたら、誰もがこうなるに
 決まってますよ」

リナの問いかけに不満そうに声を上げたリヴィに、顔をしかめた
ゼロスは即座につっこむ。
何度か瞬きをしてから、リヴィは肩をすくめた。

「まあ、また何かあればまたお仕置きにくるからいいけど」

彼らとしてはあまり良くないだろうと、リヴィを除くリナたち全員は思う。
人間側からすれば、そうまずいことではないのだが、
多少同情を覚える光景ではある。

「ここに寝かせておくのも邪魔かな」

リヴィはぽつりと呟くと、回していた杖を止めて軽く地を叩く。
すると転がっていた竜達の周りを淡い赤の光が囲い、
一瞬強く光った次の瞬間には、地面にもう何も倒れてはいなかった。

虚空に杖を消したリヴィに、ミルガズィアは尋ねる。

「彼らをどこに送ったのです?」
「とりあえずゼフィーリア」
「え゛」

リナがぎくりと肩をこわばらせる。

「……に、送ろうと思ったんだけど。ルナのバイトの邪魔を
 したくはないからね。彼らの神殿に送り届けたよ」
「そ、そう」

あからさまに、ほっと肩から力を抜いて安堵するリナの様子に
リヴィはくすりと笑う。
飄々とした笑みを浮かべて明後日の方を見るゼロスは、
リナの感情をちゃっかり食事しているのだろう。

リナが知ったらただじゃすまないと、目を細める。
そんなゼロスの姿も見てみたいと思ってしまうリヴィ。

「私もまだまだ子供ということかな」

誰にも聞こえないように小さく笑った。





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