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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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14

 
―正体―

 
 

絶叫し終えたリナは、顔をさああっ! と青ざめさせる。
リヴィはリヴィで未だに笑いが収まらないのか、
くすくすと続けている。

「ね、ね、姉ちゃんと同じっ!?」

慌てだすリナを見て、無理矢理ながら笑いを引っ込めたリヴィは、
とりあえずこほんっと一つ空咳をした。
そしてリナたちに向かって微笑む。

そして杖で地を打つ。
すると、その場に柔らかなシートが敷かれて、大きく丸いテーブルと
ティーセットが忽然と現れた。

「立ち話も何だからね。座って話そう」

いそいそとお茶の用意を始めるリヴィに戸惑いながらも、
それぞれおもむろにテーブルの前に座る。
全員のお茶を淹れ終えると、リヴィは一つ息をついた。

「とりあえず改めて、ちゃんと名乗っておくね。私はリヴィ。
 リヴィオル=セストルーク」
「……!」

ふいにゼロスがぴくりと片眉を上げる。
それに気づいて、嬉しそうにリヴィは笑う。
ゼロスは聞いたすぐそばから、本名の意味が分かったのだろう。
リヴィの名前に何が隠されているのかが。

「ミルガズィアさんとメフィさんは知らないみたいだね?
 リナさんのお姉さん……ルナ=インバースは、
 “赤の竜神の騎士” (スィーフィード・ナイト) だよ」



ごぶばっ!!?



「げほごほごほげほごほほっ!!!」
「ごほごほごほっ!!」



飲みかけていた紅茶を思いきり噴き出す二人。
咳き込みながらぎぎぎ、とリナに視線を送るメフィに対して、
リナは青ざめたまま小さく頷く。
ミルガズィアは口元を拭きつつ、冷や汗を垂らす。

「な、なるほどな……。リナ殿の周りに魔族絡みの事件が
 やたらと多いのも、それなら確かに頷けるな……」
「で……ですわね……」
「そこで納得されるのもアレだけどね……」

がっくり肩を落としてリナは溜息をついた。
そして今度は、リヴィに視線を移すミルガズィア。

「ではガウリイ殿が言った同じとは――」
「ああ、それは少し違うんだ」

ぱたぱたと手を振って、リヴィはそのあとに続けられようとした
言葉を否定する。
何せガウリイは “同じ感じ” と言っただけで、断言したわけでは
ないのだから。

それにしてもと、リヴィは苦笑する。

ガウリイ=ガブリエフの勘は、時に鋭すぎる。
隠していないとはいえ、よくそこまで気づけるものだ。
傭兵として養われたものか、魂に刻まれた感覚かは分からないが。

「 “赤の竜神の騎士” とはその身にかの竜神の意思と力を宿し、
  “赤竜の剣” を扱える人間を指す。それは、妹であるリナさんが
 一番よく分かっているよね?」
「そりゃあ、もちろん」

過去の色々を思い出したのか、リナはぶるりと体を震わせる。

「私はそうじゃないんだ。私のこの身にある竜神のものは、
 かの意思のみ。だからカオス・ワーズを必要としない、法則に
 平行する力を使える」
「それじゃあ一体、貴方は……?」

おそるおそる問いかけてくるメフィに、リヴィはにっこりと微笑んだ。

「私は、ルナ=インバース、現 “赤の竜神の騎士” の対である、
 “赤の竜神の神官” (スィーフィード・プリースト) と呼ばれる存在」



ごぶふうっ!!!



ミルガズィアたちと一緒に、リナも紅茶を噴き出した。

唖然とする姿を想像していただけに、思わずリヴィはきょとんと
首を傾げてみせた。
ゼロスも三人の反応に疑問を持ったのか、ぽかんとしている。
げほげほ、と咽ながらミルガズィアが顔を上げる。

「で、では貴殿がそうなのか!?」
「えっと――存在を知っていたのかい? 秘匿していたよ?」

世間に一言も知らせる事はなく常に正体を隠し、影で存在してきた
“赤の竜神の神官”……その存在を知る者は皆無。

――で、あるはずなのだが。

目を瞬かせるリヴィ。
ミルガズィアは難しい顔で、重々しく頷いてみせた。

「私は……降魔戦争当時の “赤の竜神の騎士” 殿から一度だけ
 訊いたことがある」
「で、でもおじさま、エルフの間では有名ですのよ!?」
「あたしは……ディルスでその存在が書かれた文献見たことあるわ。
 ……とは言っても、たったの数行だったけどね」


思いもよらない発言に、リヴィはただただ驚いていた。

人と深く、関わろうとしなかった前世までの自分。
深く信頼していた仲間にさえも、打ち明けなかった真実。
それがごく一部とはいえ、知られていた?

ふと、思い出す。

執拗に自分に会いたがった対の存在を避けていたこと。
たまたまエルフの村一つを助けたこと。
仕事でディルスに立ち寄った時があること――。

終結している、目醒めた千年後。

「ああああああああああああああああああああ」

全てを創造せし金色の母からあの時言われた事が、
今ようやく分かったのだった。





『次に目醒めた時、分かるだろう』





NEXT.

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