とりあえず、セルティと新羅と呼ぶことが決められたあたしは、
二人の案内でリビングへ通される。
リビングの大きな窓の向こうに、綺麗な夜景が広がってた。
さすがは高級マンション。
「あ、愁ちゃん。足元に気をつけ――」
新羅が何か言いかけたちょうどその時、あたしはスリッパの下に
何かを踏んづけてズルッと後ろにバランスを崩す。
ちょうど後ろにいたセルティが、慌ててあたしをかばってくれたけど、
勢いあまって2人でコケた。
「わあっ!?」
「あーあ……2人とも、大丈夫かい? ごめんね、さっき色々と資料を
バラまいちゃってね。まだ残ってたみたいだ」
『ちょっと新羅! この前も似たようなことをしたのに。だからきちんと
ファイルに閉じた方がいいって言ったじゃないか』
「あはは、ファイルに閉じるために資料をまとめてたんだよ」
どうやらあたしが踏んづけたのは、新羅の資料らしい。
あたしはゆっくり体をおこして、セルティに謝ろうと振り向いて――
目を見開いた。
「セルティ――ヘルメットが……」
『え? ヘルメットがどうかし……あっ!?』
セルティは律儀にPDSに文章を打ち込みながらも、ごろりと床に
落ちているヘルメットに気がつく。
振り向いたそこに、ライダースーツを着た首のない女の人がいた。
『い、いや、あの、愁、落ち着いてくれないか?その、ね』
「えーっと……まずセルティが落ち着いて? 一応大丈夫、あたしは
そんなに驚いてないから」
「へえ……愁ちゃんって、意外と肝が据わってるんだねえ。多かれ少なかれ、
セルティの姿には驚きはするものなのに」
「いや、まあ……、色々と驚いてはいるんだけど……とりあえず元々、
ファンタジーとか大好きな方だし」
平然と言葉を返したことに驚きつつも、どこか面白そうにあたしを見てくる
新羅に、軽く肩をすくめる。
……確かに出逢った時にいきなり首なしの姿だったら驚いただろうけど、
むしろ異世界トリップだって気づいた時のが酷かったよ。
拍子抜けしたようなセルティの様子に、思わずくすりと苦笑した。
「とりあえず……2人がいいんだったら、話聞きたいな」
後ろからの守り手、驚きに至り