セルティがつれてきてくれたマンションは――何と言うか……、
高級感が溢れてた。
お昼のテレビやメディア雑誌で何度か紹介されてるようなとこで、
色んな意味で “高い” っていう感じがするとこ。
マンションの下にバイクを止めたセルティは、あたしの手を取ったまま、
慣れた足取りでマンションの中を進んでく。
そして、ようやくひとつのドアを開いた。
「お帰り、セルティ。そして、こんばんは」
玄関には、白衣で眼鏡をかけた、ちょっと童顔気味の男の人。
顔で判断したら、あたしと同じくらいか少し下にも思えるぐらいの。
「あ、こんばんは……。すみません……押しかけてしまって」
「ははは。いやあ、僕も興味があったのさ。見過ごせないんだ! って、
セルティが初めて頼んでくるものだから」
『新羅っ!!』
照れたように肩を揺らしたセルティが、 PDS を突き出す。
からりと笑ってみせた男の人は、ゆっくりとあたしの方に視線を戻す。
「初めまして、僕は岸谷新羅。セルティの同居人だよ」
『ああ、ごめん。そういえば私もちゃんと名前を名乗ってなかったね。
私はセルティ・ストゥルルソン』
「あ、えっと……こちらこそ初めまして。私は草薙愁といいます。
一晩、お世話になります。ストゥルルソンさん、岸谷さん」
「ああ、新羅でいいよ」
『私もセルティでいいよ。それに、敬語じゃなくていいから』
頭を下げたあたしに、新羅とセルティが肩をすくめる。
「……ありがとう。セルティさん、新羅さん」
「うーん、まだ固いなあ。ためしに敬称なしで呼んでみて?」
「え、でもそれはさすがに……」
『私もその方がいい』
「……ありがとう。セルティ、新羅」
……これって “トリップ特権” ……?
名前を呼ぶのは……普通だよね?