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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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頭を落ち着かせようとしてアパートに帰ってみた。

――あたしが住んでるアパートは影も形もなくなってて、
見事に知らないマンションが建ってた。
愕然と立ち尽くしたあたしに残ったのは、唯一持ってた鞄だけ。



あたしは一体どんな表情で、どんな風に池袋まで戻ってきて、
どうやって歩いてきたのかさえ、自分でも全然覚えてないと気づいた。
いつのまにかぼんやりと、知らない公園のベンチに座ってたから。

とても明るかったはずの空はすっかり夕暮れを通り過ぎて、
辺りはどんどん暗くなってきてる。

これから一体どうしたらいいのか、分からない。

せめてアパートが残ってれば良かった。
そうすれば、ただ自分の部屋に篭もっていられた。
これからのことを考えるくらい、出来たのかもしれないのに。

それさえ許してくれないなんて、本当にどういうことなんだ。
有利に働いてくれる “トリップ特権” ぐらいくれたっていいじゃんか。



――ぽん。



頭に、優しく誰かの手が乗った。
大げさに驚く気力もなくて何回か瞬きして、ゆっくりと顔を上げる。
黒いライダースーツに、猫耳ヘルメットを被った女の人が、
すぐそこに立ってた。

女の人は何かを心配してるらしい。
少しだけ首を傾げるようにして、あたしの目線に合わせるようにそっと
身をかがめてくる。

ヘルメットの中は何もない。
そのはずなのに、柔らかく細めた瞳があたしを見てると錯覚した。
これがあたしの “トリップ特権” なんだろうか。

そんなことはどうでもいい、今は何も考えたくない。
だって頭の中がぐちゃぐちゃになって、言葉だって何も出てこない。

――彼女があたしを見つけてくれた。

今はそれでいい。

「……っう、っ、ぅううーっ……!!」
「!?」

ついに涙腺が崩壊する。
意地で声を押し殺しながら、あたしはセルティの前で泣き崩れた。





号泣するのは、今だけだ!

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