※分史ミラの独白SS
ジュードは、仲間のことを良く分かってると思う。
かなりのお人好しでおせっかいな性格が、そうさせてるんだわ。
ふとした時に声をかけてきたり、自分から手を貸してたり。
下手に気を使ってるなら止めてほしい。
でも、ジュードの場合は、自分がそうしたいからしてるのよ。
声をかけることも、手を貸すことも、強要されたわけじゃないのに。
私に声をかけることも、私に手を貸すことも。
私が強要しなくても、ジュードは自分からしてくれる。
だけど、違うのよね。
「そういえばジュード」
「何? ルドガー」
「ジュードはミラのこと、何だかんだで、ずっとさん付けで呼んでるよな。
もう呼び捨てでもいいんじゃないか?」
「あ、うん……。でも初めて会った時に、“呼び捨てにしないで”って
ミラさんに言われちゃったからね。だから何となく……」
ジュードは、私を“ミラ”だなんて呼ばないもの。
気がつかなくていいって所に気がつくくせに。
呼び捨てにしていいわよって言ったら、そうするのかしら。
きっと呼び捨てにするんでしょうね、ジュードなら。
私の言葉に驚いた顔をしたあと、少し困ったように笑いながら。
そう、いつもみたいな笑顔じゃないのよ。
知ってるわよ、ジュードが呼びたい名前のことも。
本当は呼び捨てで呼びたい時があるってことも、知ってるわよ。
私だってミラなのに、私も同じミラなのに。
ジュードの呼び声は私を追い越す。
ジュードの視線は私を通り過ぎる。
ジュードの微笑みは私をすり抜ける。
その先にはいつだって、ジュードの“ミラ”がいる。
ジュードにとってただ一人だけの“ミラ=マクスウェル”。
ここにいるのは、私。
今ジュードの目の前にいるのは、私なのに。
それでもジュードは“ミラ”だけを見ているのね。
本当に、何て嫌な女――ミラ=マクスウェルなんて大嫌いよ。
優しさも愛しさも全部、あんたのものだっていうのに。
彼の絶望でさえ、私のものにはならなかった。
私はミラ=マクスウェル。
私が大嫌いな女と、同じ女。
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