忍者ブログ

黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

Scene (ハリポタ)


※クリスマス企画
※実は同じ世界観
※名前変換対応


Scene.いつかの過去



「あねうえーっ!」
「ねーしゃまぁ」

いつものように、シリウスがレギュラスを連れて飛び込んでくる。
けれど私は、思わず目を瞬かせてしまう。
いつもは早くて夕方頃か、夜になった頃合を見はからって来るのに、
今夜はもう9時を過ぎてしまっている。
もう今日は来ないだろうと思っていたくらいで。

「……シル、レグ? どうしたのです、こんな遅くに……」

2人一緒に抱きついてくる弟たちに、私は首を傾げる。
ぱっと顔を輝かせながら、シリウスが応えた。

「あのね、おじうえがつれてきてくれたんだ!」
「おじうえがー」

驚いて顔を上げる。
すると二人から数歩離れた背後に、アルファード様が佇んでいた。
静かな面持ちであるものの、口元には微苦笑が浮かんでいる。

「アルファード様、一体……」
「すまない。二人を連れてくるつもりはなかったのだが……」
「おじうえ、ひとりだけあねうえにあうの、ずるい!」
「ずるいのー」

二人に怒られたアルファード様は、くすりと声を立てた。

「お前たち、姫君に言うことがあるのではないか?」

アルファード様に促されたシリウスが、振り向く。
そしてレギュラスを抱き上げて、笑顔で。

「めりーくりすます、あねうえ!」
「ねーしゃま、めりーます!」

私は口元を押さえながら、唖然とする。
部屋にカレンダーはあるものの、日付の感覚がいまいち曖昧な
屋根裏部屋ではあまり意味を持たないものだった。
今日は――クリスマス?

「メリークリスマス、姫君」
「アルファード様……」
「仕事で遅くなってしまったのだが、ただ一言、と……。
 しかし、シリウスに見つかってしまったのは誤算だったが」

クリスマスという言葉を聞いたのは、どれぐらい前なのか。
“かつての私”の時なのか、それとも本で読んだのか。
――身近な言葉でないことは確かだ。
戸惑っていると、アルファード様の暖かな掌が、そっと頭を撫でた。
柔らかな眼差しに促され、私はようやく微笑んだ。

「シル、レグ、アルファード様、メリークリスマス!」





Scene.いつかの未来



朝の光に目を覚まし、ぼんやりと目をこする。
欠伸をしながら起きると、傍で寝ていた姿はない。
温もりすら消えていることから、とっくに起きているのだろう。
ラフな私服に着替えてリビングに降りていく。
ソファで紅茶を飲んでいた親友が気づき、溜息をついた。

「君ね……いくら朝が苦手だからって、もうすぐお昼だよ?」
「……知ってる」
「はあ。コーヒーでも飲んで目を覚ましなよ」

とっくに目は覚めているが、寝起きでは言い返すのも面倒だ。
無言でキッチンに向かい、コーヒーメーカーからコーヒーを入れる。
どうやら出来立てらしいコーヒーに、頬が緩む。

「あ、ちなみにそれやったの僕だから」

……余計なことを……。

「……いないのか?」
「少し前に買い物に出たよ。今日帰ってくるって言ってたろう?」
「ああ――そうか」
「列車の時間からすれば、多分夕方頃に着くかな」

たった数ヶ月とはいえ、成長期のあの子が帰ってくるのだ。
どれほど大きくなっているのか、どれほど頼もしくなっただろうか。
そう考えると、子供みたいに楽しみに思ってしまう。
たとえ言葉にしなくとも、親友だって同じ心持ちのはず。

……ん?

「出かけた……って……1人でか?」
「君は寝てて、僕は留守番だから、1人しかいないだろう?」

淡々と言う親友。
せっかく目覚めた思考が、一瞬止まった。

「君が起きるまで待ってたら?とは、一応言ったんだよ、僕もね。
 “お昼まで待ってたんじゃ、時間がもったいないじゃない”ってさ。
 正論だねえ」

俺はガッとコーヒーを飲み干し、部屋に戻って服装を整えると、
棚からゴーグルを引っつかみ、リビングへ走り戻る。
ヘルメットをかぶっている時間さえ惜しい。

「行くのかい?」
「高確率でスネイプと会うだろうからな!」

呆れたような声に俺は睨む。

「……それは否定出来ないな。どうしてか遭遇率高いよね」

親友の言葉を背に、俺は庭のバイクを急発進させた。
俺を見送った親友の呟きなど、知らず。

「でもセブルスはホグワーツにいると思うけど……」
「リーマス、セブルスがどうかしたの?」
「いや、ちょっとね」

リーマスは振り向き、裏口から空になった洗濯籠を抱えて
不思議そうな顔で戻ってきた彼女に微笑む。

「っていうか、シリウスどうしたの? すごい勢いで出てったけど」
「さあ。ハリーが帰ってくるから、落ちつかないんじゃない?」
「えええ……? まあ確かに、ハロウィーン休暇は向こうで過ごして
 こっちに帰ってこなかったけどさ」

首を傾げる彼女。
実は、1時間くらい前にすでに帰ってきていた。

「何か飲むものでも買ったら、すぐに帰ってくるよ」
「それならいいけど……」
「はしゃいでるんだよ、きっと」
「……ねえ、リーマス……何か隠してない?」

にっこりとリーマスは笑ってみせた。

「メリークリスマス、ハルカ





END.

拍手[0回]

PR