※『突発台詞~39~』ネタ
※パラレルです
※出てくるのは、綱吉・XANXAS・骸+ヒロイン
「ザン兄、これ何?」
「ざんにー、これなーに?」
机の上に放置されていたものに気づいて、私は兄に問いかける。
私の真似がお気に入りの綱吉は、きょとりと首を傾げる仕草つきだ。
めちゃくちゃ可愛い。
兄――XANXASはちらりと私たちを見下ろす。
「ああ? ただのワイロだ、気にすんな」
「ザン兄にワイロって……勇気あるねえ。何のワイロ?」
「なんのわいろー?」
XANXASは興味がなさそうに、ワイロが乗ったままの机の上に足を置く。
頭の後ろで腕を組み、椅子に深く背を預けた。
ワイロなんて蹴っても、机から落ちても、まったく気にしなさそうな様子。
不機嫌というより何だか眠そうにみえる。
……書類が積み重なってたし、処理大変だったのかな。
綱吉がXANXASの椅子によじ登ろうとして、首根っこを捕まえられる。
そのままひょいっと、お腹の上に乗せられて綱吉はご満悦。
カメラ持ってくればよかった。
「知らん。大方ボンゴレに取り入ろうって腹だろ」
「えー、うちに……? でもそれだったらヴァリアーのボスであるザン兄に
渡すのって、おかしくない? 下手したらそこで潰されるよね」
「おかしくなーい?」
綱吉が寝そべりながら問いかけたところで、ドアが開いた。
「クフフ、仕方ありませんよ」
静かに部屋へ入ってきた人物に、綱吉が顔を上げる。
「あ、お帰りなさい、骸くん。どういうこと?」
「むっくー、おかえりー!」
綱吉の守護者である骸の帰還に、綱吉も何だか嬉しそうだ。
にこにこ笑う綱吉の表情をつと眺めて、骸は微笑を浮かべて頷く。
「クフフ……只今戻りましたよ。仕方ないというのはですね、ワイロを
渡してきた相手が、XANXASを十代目候補と思っているからです」
「ザン兄はヴァリアーのボスなのに」
「ばりあーのぼす!」
「ええ、そうですね。しかし、周りからはそう見えません」
骸の苦笑に、今度は私が首を傾げる。
「それはどういうこと?」
「XANXASはボンゴレの長男であり、とっくに成人していますね? つまり、
ヴァリアーのボスに就いているのは、いずれボンゴレの十代目となる
XANXASの修行と経験積みの期間と思われているんですよ。まして現在
5歳の綱吉君がそうだとは考えもつかないと。」
勝手知ったるというような言葉に、私は言葉をなくす。
確かに骸はそういう事情には悟いし情報通だ。
XANXASも何も言わないし、その表情からして当たってるんだろう。
だからといって。
「ヴァリアーのボスの座って……そんな軽いものじゃないよ?」
「ないよ?」
「独立暗殺部隊ですしね。実力と実績がなければ、たとえそれが身内で
あろうとも、九代目がその座を任命するわけがありません」
見くびられたものだと思う。
確かにファミリーの絆は強く深いし、掟やルールは大事なものだ。
だからこそ身内には甘すぎてはいけない。
ボンゴレファミリーは確かに他のマフィアのようには過激ではない。
比較的、今の時代のマフィアとして穏健の部類にも入るだろう。
けれど歴史あるマフィアである自覚も、確かな矜持もある。
私が憤慨していると、XANXASがぐしゃりと私の髪をかき混ぜた。
「フン、綱吉に群がるよりはマシだろうが。渡してきた奴の顔も覚えたしな」
「あー……今日スッくんいないの、だからなんだ」
「そういうことだ」
そういえば朝からスクアーロがいなかった。
XANXASが書類仕事をしているから、実働しているのかと思ったけれど、
そういう事情があったのか。
「クフフ……。それでは僕は九代目に報告しに行きますので」
「むっくー、あとでねー!」
「ええ、後で」
綱吉が振る手に、骸は綺麗に笑って部屋を出て行く。
遠ざかる気配を感覚で追いながら、XANXASを振り返る。
「報告より先にこっちに来てたんだ、骸くん。つーくん見に来たのかな?」
「だろうな」
「本当に骸くんって、つーくんに甘いよね」
XANXASが目を瞬かせた。
「……テメェが言うか」
「ザン兄もね」
もちろん、ブラコンの自覚はあるよ。
END.