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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

かける思い出(ハリポタ)


※11年ハリー誕生日記念
※ネタだけ念頭に超特急で仕上げたので内容がない
※半分パラレルっぽく、ほぼメインはジェームズ


「……ねえ」

ハリーが眉をひそめながら、低い声で問いかける。
前を歩いていた少年が振り返って首を傾げた。

「ん?」
「ここってどこなのかな」
「どこって、ホグワーツだろう?」
「僕、さっきまで家で寝てたはずなんだけど」
「あれ? そうだったっけ?」

きょとんと目を瞬く少年。
けれど、どこか面白そうにハリーのことを見ている。
ハリーはその視線に少し苛立ちながらも、溜息をつく。

「うん、っていうかね、ホグワーツにいることもありえないんだけど、
 貴方が僕の隣にいるっていうのもありえないっていうか」
「何言ってるんだい? 僕らは生まれた時からずっと一緒さ☆」
「だから……どうして父さんであるジェームズ・ポッターが子供の姿で
 僕の隣で笑ってるのさ。っていうか僕もいつのまにか子供になってるし」
「あっはっはっ☆」
「止めて、父さんだけどイラッとするから」

わりと本気でハリーは言う。
しかし、ジェームズはひょいっと肩をすくめただけ。

「ハリーは変な夢でも見たのかい?」
「夢って……」
「いやまあハリーが僕の息子っていうのも捨てがたい世界であるとは
 思うけど、君は僕の愛しい双子の弟じゃないか!」
「……はい? 双子? 誰が? 僕と貴方が?」
「ハリー、あんまりに真顔すぎて兄さん泣きそう……」

しゅん、と肩を落とすジェームズ。
ハリーはそれを訝しげに見やっていたが、はたっと我に返る。
もう一度子供の姿になった己を見下ろして頷いた。

「ああそっか、夢なんだねこれ」
自己完結された!! え、ちょ、僕らの双子生活を夢にしないで」

隣でジェームズが盛大にショックを受ける。
だが、ハリーはまったく気にしない。
むしろようやく奇天烈な現象を受け入れることが出来た。
何とも懐かしいローブの着心地に、笑みが浮かぶ。

「夢なら楽しむのもアリだよね。それにしてもホグワーツにいるのも
 久しぶりだなあ、何年ぶりになるんだろう?」
「ハリー! 兄さんを見てぇぇぇぇぇ!!」
「あとでね」

ハリーがまとわりつくジェームズをあしらっていると、後ろから
新しい声がかけられた。

「何だよ、ジェームズ。まーたハリーにスルーされてんのか」
「スルーじゃない! ただハリーは考え事をしてるだけなんだ!!」
「つまり、何で君と双子なのかって悩んでるんだね?」
「リーマスひどい!」
「うん、ちょっと当たってるけどね」
「待ってぇぇぇぇ!! ハリー肯定しないでぇぇぇぇぇ!!」

ハリーは振り返ると、シリウスとリーマスに目を止める。
彼らの子供の姿は写真でしか見たことがないのだが、とても懐かしく
感じられる。

「ジェームズも必死なんだしさ、もうこいつと双子だってのは諦めろ、
 ハリー。いいじゃねえか、似てるのは顔だけなんだしよ」
「え? 何だい、シリウスそれは僕がかっこいいって」
「頭のノリはお前のが優秀だろ?」
「それもそうだね。ありがとう、シリウス」
「ハリー!!!!!」

打ちひしがれ、がっくりと膝をつくジェームズ。
すると、今度は少女の声がジェームズの背中を叩いた。

「ああもう、朝からうるさいわね。そこにしゃがんでると通行の邪魔に
 なるわよ、ジェームズ。おはよう、ハリー」
「え、えっと……おはよう……」
「聞いてくれよ、僕の麗しのリリー! ハリーってば」
「あんなのほっといて朝食に行きましょ。時間なくなっちゃう」
「うん」
「ハリー、リリー!!!!!」





そんなこんなで、何故か目が覚めたらジェームズの双子の弟として
ハリーはホグワーツの生活をすることになっていた。
夢だと思うその生活はやけにリアルで、授業にも手が抜けない。
とはいえ、すでに卒業しているハリーからすれば簡単な授業ではあったが。

ジェームズの弟として過ごす一日は、とても忙しく、楽しかった。
その目まぐるしさは、ハリーでもあまり体験のない怒涛の勢い。

まずジェームズが先頭になって全速力で走り、そのあとをシリウスや
リーマスが色々仕掛けを置きながら走る。
それをピーターが何とか追いかけリリーが叱り飛ばしながら追いかける。
ハリーは突っ切るジェームズに手を引かれながら、走らされた。
あるいは同情されるように、シリウスとリーマスに肩を叩かれながら。
被害にあうのはセブルスたち他の生徒、教師は怒るか呆れ顔。

まさに学校全体を巻き込む台風だ。

本当に駆け抜けるように時間は過ぎ、ハリーが一息つけた頃には、
すでに夕暮れに染まるクィディッチ場で仰向けに寝転んでいた。


「あああああ……疲れた……」
「あははは、クィディッチの練習よりはマシじゃないか」
「クィディッチは楽しいから辛くないってだけで……こんなに1日中
 学校を走り回ったのなんて、初めてだよ!」
「あっはっはっはっ」

隣に寝転がるジェームズは、楽しげに笑う。
いつのまにか、シリウスとリーマスすら置いていってしまったらしい。
クィディッチ場には、ハリーとジェームズしかいなかった。

「本当にもう……」
「楽しかっただろう?」
「だから、そういう問題じゃ」
「――楽しかった?」

ジェームズの声に、ハリーは顔だけ横に傾ける。
笑みを浮かべながらも、ジェームズは真剣にハリーを見ていた。

「うん……楽しかったよ、すごく」
「だったら良かった。これが僕からのプレゼント」
「え?」
「ハリー、誕生日おめでとう」

ジェームズの手が、ハリーの前髪をくしゃりと撫ぜた。
掌が邪魔になり、ジェームズの顔が見えなくなる。

「驚いただろう? でもね、僕も楽しかったんだよ、君と遊ぶことが
 出来てさ」
「……これは夢?」
「本当は僕にもよく分からない。でもね、君を見た僕は思ったんだよ。
 “ああ、絶対に僕はハリーを楽しませなきゃいけないんだ”って。
 だから今日は、全力で君を楽しませようと頑張ったよ。いつもの
 僕たちはもっと落ちついてるんだよ?」
「想像出来ない!」
「あはは」

夕暮れに染まっていた場所は滲み、ゆっくりと見えなくなる。
もうすぐ、夜が来る。

「僕は君の誕生日を一緒に過ごせて良かった」
「僕も嬉しかった……楽しかった」
「また一緒に、悪戯しようじゃないか」
「……楽しみにしてる」
「またね」

そっとジェームズの手が離れる。
ハリーは最高の笑顔で、答えた。

この“夢”が持つ真意は分からないことが多いけれど。
それでもきっと、幸せであることは間違いないから。

「ありがとう。ジェームズ、貴方に会えて良かった……!」





一人、ゆっくりと目を開くジェームズ。
愛しい“弟”の言葉の余韻が胸に残っている。
きっといつかまた、彼に会える気がした。
その時はもう一度。

「誕生日、おめでとう」

ハリー。





END.

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