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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

逢うことの出来た世界で(ハリポタ)


※七夕記念に用意していたもの
※ハリポタ夢主一同だが表にいない子もいる
※ハリポタキャラ皆無
※変換対応していません




「……よし、こんな感じかな」

笹が倒れないようにしっかりと紐を結わえていたセツリは、
そっと手を離して、きちんと固定されていることを確認する。
満足げに頷いていると、後ろから歓声が上がった。

「わー、出来たんだ!」
「あれ? アオイ。どうしたの、キッチンの方を手伝ってたんじゃ
 なかったの?」

ひょいっとセツリが振り返ってみると、いつのまにかアオイが
きらきらと目を輝かせながら笹を見ている。
不思議そうなセツリの言葉に、アオイは苦笑する。

「いやー、それがさ……。あっちにはとっくに優秀なお手伝いさんが
 2人もいて、俺はあんまり役に立てなかったというか……」

実際の所、アオイは小学生の頃からつたなくも家事をしていたので、
料理は人並みに出来る。
とはいえレパートリーは多くなく、環境がまるっきり変わった今では
全て作ってもらうようになったため、それこそ毎日のように家事を
こなしている人とは比べ物にならないのだ。
中心となって鮮やかな手並みで料理を作っている姿を思い出して、
アオイは思わずがっくりと肩を落とす。

「あはは。まあ、向こうは家事をするのが仕事みたいなものだからね」
「そりゃー分かってるけど……」
「だからアオイくんには、僕を手伝ってもらったんです」

ふいに、アオイの後ろからひょっこりを顔を出す背の低い少年。
さらりと肩ほどに伸びた黒髪が揺れた。

「なるほど、ホクトくんの方を手伝ってたんだ?」
「はい」
「……だけどホクト先輩……。俺としては、何だか先輩の言うほど
 手伝ったってた気はしてないですよ……?」
「そんなことないよ。少し手間取っていたから」

ふわりと微笑むホクト。
ホクトは背の低さやあどけない顔つきから、アオイたちよりも幼く
見えてしまっているが、まぎれもなくひとつ上の先輩だった。
セツリはホクトをどこかで見かけていたような気がしているのだが、
それがどこだったのかは覚えていない。

「良かったじゃん、アオイ。それで、何を作ってたの?」
「これだよ」
「みーんなー! そろそろ料理が出来るよー」

ホクトが手に持っていたものを見せようとした時。
キッチンを手伝っていた少年が、窓からひょっこりと顔を出す。
眼鏡をかけた彼のまっすぐな黒髪が揺れる。
その髪をくしゃくしゃにしてみると、実はアオイたちの知る少年に
瓜二つとなるのだが、そのことには誰も気がついていなかった。

「ありがとう、ジャスくん。呼びにきてくれたんだね」
「いいえ、僕は頼まれただけですから。……ああ、これが皆が言ってた
 ササなんだ! すごく綺麗だね」

にこにことジャスが笹を見上げる。
そこに、手におたまを持ったまま呆れた顔をした少女が現れた。

「こーら、ジャス。皆を呼んできてって言ったでしょ?」
「あ、ハルカ。ごめんごめん」
「まったくもう……。セツリさん、笹の方ありがとう」
「どういたしまして」
「ほら、料理が冷めちゃうから入って」

ハルカが先に中へ入り、セツリたちはその後を追う。

「おお! すっごい!!」
「へえ……これは美味しそうだ」

テーブルの上に並べられた料理に各々驚く。
色鮮やかな散らし寿司に、涼やかな七夕そうめん。
野菜が星の形に切られたサラダ、ゼリーなどのデザート。
セツリたちの反応を見たハルカは満足そうに頷く。
そして、ジャスと一緒にキッチンを手伝っていたもう1人の幼い少女から
小皿を受け取ると微笑みかける。

「ありがとう、ハルカ。大変だったでしょ?」
「ううん、そんなことないよ。料理は慣れてるし、アオイくんもジャスも、
 リープちゃんもすっごく手伝ってくれたから」
「あの……ハルカさん。わたくしは、それほどお手伝いが出来たとは
 思えませんが……」

首を振るハルカの言葉に、少女が不安そうに首を傾げる。

「ううん! 料理初めてって言ってたけど、すぐに覚えてくれるし、
 手際がいいから本当に助かったよ」
「そうなのですか? でしたら、良かったですわ」
「ふふふ。……作ってあげたい人がいると、張り切るもんね」
「は、ハルカさんったら」

こっそりと小声でリープにのみ聞こえるように言うハルカに、
リープは頬を染めた。
手伝いをしながら少しだけ同居人の話をしたリープだったのだが、
ここまで正確に真実を読み取られたのは初めてだった。
もしかしてハルカもそんな人がいるから料理が上手なのだろうかと考えた
リープは、ちらりと見てみる。
ハルカの胸元のネックレスが、しゃらんと音を立てた。

「ほら、早く食べよう」
「ちょっと待って、ハルカちゃん。料理の前に、これを」

ホクトがハルカを止めて、手にしていたものを見せる。
それは、淡く五色に色づく長方形の和紙。

「ああ、短冊だね! ふふ、せっかく笹まで飾ったんだし、やっぱり
 短冊がなくちゃね」
「でしょう?」
「タンザク……?」

聞きなれない言葉に、ジャスはきょとりと首を傾げる。
リープは珍しいものを見たかというように、目を瞬かせていた。
それに、ふわりとホクトは微笑む。

「ジャスくんと、リープちゃんは七夕が初めてなんでしたね。これは
 短冊といって、願い事を書く札なんですよ」
「確か色が5つなのは五行からきてるんだっけ?」
「正解です、セツリくん。元々は中国のお祭りですから」

そう言いながら、ホクトは短冊を配っていく。
セツリは白、アオイは緑、ジャスは赤、ハルカは黄、リープは黒、ホクトも
アオイと同じ緑を選ぶ。
リープは自分の短冊を見つめ、ハルカを見やる。

「願い事には、何か決まりはあるのですか?」
「うーん、本当は織姫にちなんで手習い事の願い事をするらしいけど、
 今では何でもありかな」
「ペン持ってきたよー」
「ありがとう、アオイ! じゃあ、さっそく書いて飾ろう!」



さらさらと、星の下で風に揺れる笹の葉。
別々に飾られた短冊は、それでも、同一の願い事。





『きみが しあわせで ありますように』





END.

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