※BL
※08年綱吉誕生日記念
「ツーナッ!」
「わあっ……ディーノ、さん?」
いつものように学校から帰ってきて部屋のドアを開けると、
いきなり目の前に白いものが飛び込んできた。
――聞き覚えのある声とともに。
おそるおそる名前を呼んでみると、白いものが引っ込んだ。
代わりに、満面の笑顔が俺の目に飛び込んでくる。
窓辺から差し込んだ夕陽で、いつもの金髪がより輝いて見えた。
もしかしたら久々に会えた欲目かもしれないんだけど……ね。
「いつ来たんですかっ?」
「今日の昼前だ。ツナん家に来たのはついさっきだけどな。すぐにでも
来ようかと思ったんだが、平日だからツナは学校だったしなー」
苦笑するディーノさんを、もう一度部屋に案内する。
母さんは買い物に行ってるらしく、声をかけても返事がない。
慣れない手つきでコーヒーを淹れて、部屋に持っていく。
俺はコーヒーとかまだ飲めないから……手順は失敗してないはずだけど、
やっぱりというか味には自信がなかった。
それでも 「美味しい」 と言ってディーノさんは嬉しそうに飲んでくれた。
本当に優しいなあ、ディーノさんは。
「そういえば……ディーノさん、さっき何か持ってましたか?」
ドアを開けた時に、何か白いものが飛び込んできたはず。
自分用に淹れたカフェ・オレを飲みながら、そう訊いてみる。
すると、ディーノさんはテーブルにカップを置く。
「あ、そうだそうだ。ほら、ツナ」
ディーノさんはにっこり笑う。
床からさっきの白いものを取り上げて、俺に手渡した。
ふわりと匂う優しい香りに思わずポカンとした。
「花束……ですか?」
「誕生日だろ、ツナ。これは俺からの誕生日プレゼントな。大急ぎで
仕事を片付けて来てなー、本当に今日間に合って良かったぜ!」
その言葉に、俺は正直に言って驚いた。
もちろん自分の誕生日のことは忘れていなかったけど。
でも、リボーンの誕生日が派手なぶん、忘れられやすい俺の誕生日。
だから今年も皆には覚えられてないんだろうなと思ってた。
まさか……ディーノさんが覚えててくれるなんて。
しかもわざわざ大変な仕事まで片付けて。
日本にまで、来てくれるなんて。
リボーンには来れなくて悪いと、謝罪の長い誕生日カードが届いてた。
だから、せめてカードくらいは欲しいなあとは思ってたけど。
やばい……嬉しすぎる。
じんわりと目じりに涙が滲んできそうになった俺は、少しだけ顔を
俯かせて花束を軽く抱きしめる。
「……う、あ……ありがとうございます、ディーノさん……。
可愛いけど綺麗ですね! この花」
「白コスモスは10月14日の、つまりツナの誕生花なんだぜ」
「そうなんですか?」
「ああ」
そういえば、よく花を数えてみれば俺の年齢の数だけある。
ドラマとか漫画では恋人の誕生日によくある、シチュエーション。
すごく恥ずかしくて、でも嬉しい。
うわあ、俺の顔……絶対に真っ赤になってるよ……!
「すいません……俺、花とかくわしくなくてっ」
「だからあえてコレにしたんだ」
「え?」
意図が読み取れなくて、隣に座っているディーノさんを見上げる。
ディーノさんは小さく口元に笑みを浮かべた。
それはいつもの優しい微笑みじゃなくて、どこか真剣みのある表情。
瞳に、熱いものが籠められてる気がした。
頭の芯が麻痺しそうになる。
……何でだろう。
心臓が壊れそうに暴れてるのに声が出せない。
ふいに、さらりと頬に触れてきた細くて長い指先。
こくりと無意識に喉が鳴った。
次の瞬間。
俺の耳元でつややかな声が響いた。
「花言葉は “少女の純潔” 」
刺青のあるたくましい腕が俺の腰を抱く。
汗ばんで震える手で上着を掴むと、また微笑まれた。
視線は熱いまま。
「Buon Compleanno, Tsuna.」(誕生日おめでとう、ツナ)
END. (綺麗なのはどれ?)