「…………………… What?」
「……えへ」
「笑ってんじゃねぇよ、foolish.」
マジな色で睨まれて、私は蛙みたく動けなくなる。
竜じゃなくて本当は蛇なんじゃないかと思う。
でも、それは当たり前の結果だ。
三年で忙しいっていうのに無理させて時間貰って。
政宗が一番得意で、私が一番苦手な教科。
その、英語をみっちりと教えてもらったのに。
自分としても、かなり頑張ったというのに。
平均点以下、赤点ギリギリ――これはないだろう。
きっと彼じゃなくても、怒りたくなるに決まってる……。
私のわがままを聞いてくれたのは、彼が私の幼馴染だからだ。
クラスメイトや友達だったとしたら、絶対に怒られる。
ピリピリしたオーラが私の体を刺していく。
本当に申し訳ない……私だって酷いショックを受けたものだ。
だけど、結果を教えないわけにもいかなくて。
「期末だろ? 俺が叩き込んだ英語だよな、Ah?」
「……はい、その通りです……」
本当に頑張った。
いつもなら投げ出してる所だけど、頑張った。
教えてもらえるのも、これで最後だから。
この幼馴染は、学校を卒業したら海を越えてしまうから。
決める前に 『迷ってる』 と言っていたから。
私はその大学へと、彼には知られず密かに入るため。
だから頑張ったのに……脳は気持ちについてきてくれないらしい。
自分のことながら、何て薄情者だ。
ああー情けない!!!
最悪の終わりだ。
「ごめん……無駄に時間とらせて……」
「 Shit, まったくだ」
「……うん、ごめんなさい……」
どうしようもなく、悔しくなってきた。
彼は自分の名前を言うような感覚で、さらさら話せているのに。
どうして彼の言葉を、この頭脳は理解してくれないんだろう。
ああ、悔しい……近づきたいのに近づけない。
テストを折りたたんでカバンにしまいこみ、帰るために立ち上がる。
しばらくひとりで勉強頑張ってみよう……合わせる顔がない。
「ったく……仕方ねえな……おい!もう一回だけ Supplementary lessons
やってやる。もっかいテストと筆記用具だけ出せ」
「……え……」
「 Do you study? Do not you study?」
「――Yes, studies me!!」
私はそのまま叫んだ。
英語、英語、英語、英語、英語。
私は英語をやらなくちゃ。
出来なきゃいつまでも追いつけない!
「それさえ間違ってやがる……最初からかよ……」
少し待ってて、英語の幼馴染。
END.(脳と精神は違うもの!)