忍者ブログ

黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

変わらない掴んだ幸せ(復活/ディノツナ)

 
※BL
※09年ディーノ誕生日記念

 




鞭をしまいこみながらロマーリオと別れ、ディーノはさっさと
執務室へと入る。
手にしていた書類の束をばらまかないようにしながらもテーブルに
放るように置いて、隣の私室に繋がるドアを開いた。

「ふー……」

ドアの鍵をしめると、同時に深く息を吐く。
指先でネクタイをゆるめて、くしゃりと髪をなぜた。

窮屈なジャケットを脱いでシャツだけになれば、背筋などに張り詰めて
いたものがゆっくりと解けていくような気がした。
どんなに上手く、見苦しくなく着こなせるようになっても、堅苦しい
スーツは苦手なままだ。

昔のように外へ遊びに出かけるようなラフな格好が、素の自分の
一番の格好だとディーノは思っている。
もちろん、今でも仕事でない時はラフな格好が多い。

ばさりと、ソファにジャケットを投げる。
すると何かのくぐもった音が聞こえた。
はっとして今更ながら眉をひそめたディーノだったが、ソファに横たわる
気配が誰のものかに気づき警戒心を解いた。
足音を忍ばせながら近づいて、背もたれから覗き込む。
そこにディーノが投げたジャケットにくるまって、すやすやと穏やかに
眠っている綱吉がいた。
その無垢な寝顔に、ディーノは小さな微笑みを浮かべる。

ディーノは綱吉を起こさないよう物音に注意しながら、静かに静かに
シャワールームへと向かった。



タオルをかぶってがしがしと頭を拭きながら部屋に戻ると、目が覚めたのか
身を起こしながらごしごしと目をこすっていた綱吉と視線があう。
すると綱吉は、大げさな動作で慌てだした。

「ディ……ディーノさん!? あ、えと、い、いつ!?」
「よ、ツナ。そうだなあ……1時間くらい前だな。待たせたみたいで
 悪かったな」
「いいえ! 俺が勝手に待ってただけですし……」

顔を赤らめながら焦り慌てている姿は、ディーノが10年前に初めて
出会った頃とまるで変わっていなかった。
子供の時に10代目を継ぐことを嫌がっていたせいか、就任が遅かった綱吉。
実力はあれど、マフィアの実績が少ない綱吉は噂の的になる。
これからどうなるかは分からないものの、今はまだ、大物と言われるか、
変わり者と言われるかのどちらかだ。

「何か急ぎの用だったのか? ボンゴレからの書類は終わってるが、
 内容からして送るのは明日でも大丈夫だと思ってた」

綱吉の様子から違うと思ったが、ディーノは一応訊いてみた。
もう “候補” ではない立派な10代目になっているのだ。
先輩であるディーノが仕事とプライベートを分けられないようなことでは、
お目付け役のリボーンに半殺しにされるであろうこと間違いなしだ。

「違いますよ。俺も仕事終わってますし」
「それじゃあ……」
「お誕生日、おめでとうございます」

一瞬、ディーノは綱吉から何を言われたのか分からなかった。
思いきり呆然とした顔をしたディーノに、綱吉がくすりと笑う。

「やっぱり覚えてなかったんですね、ディーノさん」
「ああ……今日、2月4日だっけか……」
「仕方ないですよ。1月前半まで誕生日はオフだってあんなに言って
 いたのに……後半に入ってからはお互いに仕事が立て込みましたから」
「あー」

ディーノは己の失態に、ぐしゃぐしゃと髪をかきまぜる。
確かに思い出せば、一月に入ってからは色々と予定を立てていた。
誰にも邪魔されることのないようなプランを、と。

しかし、一月の終わり頃から綱吉もディーノも互いに仕事が立て込んで、
直接会って話す機会が少なくなってむしゃくしゃしていた。
早めに仕事を終わらせようと、いつになくきりつめたりしていて――
そこからディーノには日付の感覚がなくなっている。

「ちくしょ……結局何も出来なかった」
「でも、今日のうちに会えて良かったです。運が悪ければ会えるのは
 明日以降になってたかもしれませんしね」
「……それもそうだな」

ディーノはソファに座ると、綱吉を引き寄せる。

「ツナの補給開始」
「もう……」

腕の中からくぐもった声で、俺だって、と小さな声が聞こえる。
それだけで、ディーノは今までの疲れが全て吹っ飛んだ。

「すみません……実は……急いでてプレゼントの用意が――」
「んー? いーっていーって。俺はツナがこうして来てくれたのが、
 何よりのプレゼントだって思ってるしな」
「……せめてディーノさんの誕生花のサクラソウぐらい用意出来れば
 良かったんですけど」
「何だ、ツナはまだ、あのこと覚えてたのか」
「忘れませんよ」

驚いたようにディーノが問えば、綱吉は楽しげに笑った。

10年前、ディーノは綱吉の誕生日に花束を贈ったことがある。
誕生花である白コスモスを、彼の年齢の数で。
恋人同士の間では良くあるシチュエーションの一つであることと普通に
ディーノは思っていたのだが、日本人な上にそういう物事に疎かった
綱吉にとっては刺激が強かったらしく、今でもこうして素直に覚えている。
真っ直ぐすぎて、今度はディーノが照れてしまうほどだ。

それでも、確かに思うのだ。

10代目になってから、よりマフィアの闇が綱吉の間近になった。
けれど大空の名が似合うように、彼は全てを包んできた。
堕ちる事もなく――澄みきって晴れわたるままで。
そのままでいてほしいのだと。

「じゃあ来年もらうとするか。今日の分も上乗せして」
「はいっ!」
「――ただいま、ツナ」
「お帰りなさい、ディーノさん」





END.

拍手[0回]

PR