忍者ブログ

黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

8 よろしくね




琳音さん!」

明るい声に、庭を一人庭を眺めていた琳音は振り向く。
秀麗がにこにこと近寄ってくる所だった。

「こんばんは、紅州牧」
「今は秀麗でいいですよ。着任式の宴って言っても……何かもう
 無礼講になってますしね……」

その言葉に、彼女の肩越しに邸の中を見てみる。
確かに華やかだったはずのにぎわいは、いつのまにか無礼講の
どんちゃん騒ぎのようになっていて。
思わず顔を見合わせ、くすくすと笑ってしまった。

「ねえ、秀麗は確か 16 なんでしょう?私も同じ 16 だから呼び捨てで
 構わないわ。敬語もなしで」
「じゃ……じゃあ……お友達にならない……?」

きょとんとする琳音に、秀麗は少し顔を赤らめた。

「あ、あのね? その、私……今まで同い年の友達っていなくて。
 だから、良ければ……」

そういえば――と、琳音は思う。

秀麗は8年前、荒れ果てた王都の酷い状況を味わっている。
幼い頃から家のためにたくさん働いて、叶わないと知りつつも夢見た
官吏になるために、ずっと勉強をこなしてきたのだ。

普通の 16 の女の子や深層の姫君など目じゃないほどに、
自我と覚悟と決意が強い。
着飾って遊ぶよりも、浮いた恋愛よりも。
己の夢に向かってひたすらに走っている少女。

「こんな私でもよければ――よろしくね、秀麗」
「ええ! 私こそよろしくね!」
「姫さんたちー、そりゃお付き合いの申し込みみたいだぞー?」
「あら、燕青。羨ましいでしょ?」

苦笑しながら茶々を入れる男に、秀麗は驚きもせずに振り返る。
さすがに誰かに言われたのだろう、髭はさっぱり剃っていた。
琳音は目元を和らげた。

「お初にお目もじ仕ります、浪州尹。英姫様の許可の元、このたび
 茶家の養女となりました、茶琳音と申します」

英姫の手腕によってすばやく全ての書類を整えられた琳音は、
本当に茶家の養女……克洵の義妹になった。
琳音はすっと、燕青に頭を下げる。
それに、燕青はわたわたと慌てて手を振った。

「わりっ、俺そういうの慣れてないから、普通の話し方でいいって。な?
 いいから顔上げてくれよ」

もしかしたら言われるかもしれないと思っていた言葉。
期待もあった予想は外れず、それをはっきりと口にした燕青。
頭を上げた琳音は、燕青を見てくすり、と声をたててしまった。
つられたのか、秀麗もくすくすと笑い出す。

「ちょっと、いきなり何で笑うのー姫さんたち!」
「燕青、貴方ねえ、口元にご飯粒」
「げ」

また慌てだす燕青に秀麗はくすくすと笑い続ける。
琳音は持っていた手ぬぐいを手渡した。

「良ければ使って。燕青さん」
「……ありがとな! あ、それと呼び捨てでいいぞ、琳音姫」





NEXT.

拍手[0回]

PR