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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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6 あらためて




英姫が克洵を支度に追いやり、春姫の覚悟を聞いたあと。
壁にもたれて座り込んで、浅い呼吸をする琳音へと振り返った。
さっと近づいて、ふわりと頭を撫でる。

――デジャ・ヴュ。

ゆっくりと一つ瞬きをしてみる。
すると、琳音はすでに自然と呼吸が出来るようになっていた。
琳音はそっと顔を上げ、姿勢を正す。

「……英姫様……お初にお目もじ仕ります。琳音と申します」
「ふふ、そのような堅苦しい言葉でなくてよい」

優しく微笑まれ、琳音は照れたように小さく笑んだ。

「気張りおったの。春姫が来るまでの間、あの闇の中でよう克洵を
 保たせたものじゃ」
「……いいえ……。私とて、克洵兄上がいてくれたおかげで
 生きているようなものです……」
「それくらいの覚悟がなければ、茶家の人間としては生きてゆけぬぞ」
「英姫様――」

琳音は驚いて、英姫を見つめる。

「そなたもまた、わたくしの愛しい孫じゃ」
「……ありがとう……ございます」
「ふん、朔洵にしては良い娘を茶家に入れたものよ」

その言葉に、英姫の後ろにいた秀麗が驚いたような顔をした。
分かっているらしい英姫はともかく、秀麗と春姫には何も言っていない。
はたり、と気づいた琳音は二人を見やる。

「私は琳音と申します。倒れていた所を気まぐれで朔洵様に拾われ、
 気まぐれで妹にされ、あの牢に放り込まれていました」

あまりにも、完結なる説明。
しかしそれをしたのが朔洵だからこそ、出来る説明。
思わずがっくりと、疲れたように肩を落としてしまった秀麗からは、
犬猫じゃないんだから! という怒りと呆れの言葉が聞こえてくるようだ。

春姫は嬉しそうに近寄ってきて、琳音の手を包み込む。

「本当にありがとうございます、琳音様」
「克洵兄上から、ずっと貴女のことをお聞きして、お会いしたいと思って
 おりました……春姫姉上」

琳音のその言葉に春姫はほんわりと頬を染めた。
本当は春姫の年齢は、彼女の一つ下。
けれど “兄” と結婚するのならば、彼女は “姉” になるのだ。

「き、着替えてきましたっ」
「遅いわっ!」

ぴしゃりと跳ね除けられて、克洵はわたわたと姿勢を正す。
けれど先刻より顔色の良くなった顔で笑う琳音を見ると、克洵は、
ほっと安堵して笑う。

「しっかり頑張ってきてね、克洵兄上」
「うん。失敗は成功の母――だったよね」
「では行くかの。琳音はここで休んでいるとよい……時がくるまでの」

英姫の言葉を正確に受け止めて、琳音はしっかりと頷いた。
静蘭との賭けを終えて、秀麗が彼から “蕾” を取り返す時まで。





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