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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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進展編-2





テッドと別れ、ハリーは校長室の前までやってきた。
冷たい廊下からドアをくぐれば、一気に暖かな空気に包まれる。
奥のソファに座っていたダンブルドアが立ち上がり、穏やかに微笑んだ。

「こんにちは。遅れてすみません、先生」
「大丈夫じゃよ。さあ、寒かったじゃろう。座りなさい」
「ありがとうございます」

促されてハリーがソファに座ると、すぐに目の前にホットココアが
出された。
紅茶ではない所がダンブルドアらしい。
けれど冷えた身体に、甘く温かい飲み物はとても嬉しいものだ。
一口飲めば、まろやかな甘みがじんわりと広がって、ほっとする。

ハリーの震えが収まったのを見てとったのか、ダンブルドアが
ゆっくりと口を開いた。

「さて、ハリーを呼んだのは他でもないが、クリスマス休暇のことじゃ」
「はい」

マグカップを置いて、ハリーは居住まいを正す。

「どうするか考えておったかね?」
「ホグワーツに残ります。――というより、それしか出来ないでしょう」
「……うむ」

思わず苦笑するハリーに、ダンブルドアは眉をひそめて重く頷いた。

普通にホグワーツに通う生徒たちであれば、ホグワーツを離れて家へ戻り、
クリスマスを家族で過ごすのだろう。

「(家族、か……)」

けれど、この時代に帰るべき家は存在しない。

そもそも学生時代、ハリーはクリスマスを家族と過ごすために家に
帰ったことがない。
家に帰るなど考えもせず、ホグワーツで過ごすことが当たり前だった。
あの頃のハリーには、帰るという選択肢など欠片もなかったのだ。
だからこそ家族と過ごすようになり、初めて、ハリーは本来のクリスマスを
知ったような思いを味わえている。
ようやくその実感に慣れてきたことがとても嬉しかった。

「――幸い、友達も出来たおかげか、子供たちも今の所は危なげなく
 過ごしています」
「そのようじゃのう」
「子供たちには申し訳ないのですが、帰ることが出来るまではなるべく、
 ホグワーツにいた方がいいでしょう」

本来であれば、5年生であるジムは休暇中にホグズミードへ行ける。
もちろんアルバスも、3年になった今年から行けるようになるはず
だったのだ。
この時代に来る前の夏休み、ハリーは提出用の許可証にサインをしていた。
ホグズミードを楽しみにしていただろうに、2人はまだそのことを
ハリーに向かって口にしない。

「ふむ……敏い子らじゃ」
「……親としてそれでいいのかとも、思いますがね」
「ホッホッホッ、それもそうかもしれないのう」
「驚かされて、振り回されてばかりです」
「子供とはそういうものじゃな」

楽しげに笑うダンブルドアに、ハリーは肩をすくめてみせた。

「子供というのは、大人のままならないものじゃのう。こちらが
 教えているものと思えば、自ら学び歩いていく。むしろ、わしらが
 教えられることも多い。わしら大人は驚かされるばかりじゃのう。
 わしらがこうした方が良いと言うことでさえ、子供たちは自らの勇気と
 知恵で行動するのじゃから」

ハリーはすくめた肩を居心地悪そうに揺らす。
ダンブルドアや周りの大人たちの心配をよそに、何度危ないことを
しでかしたか。
心配されていることにも気がつかず、八つ当たりすらもしていた。
ダンブルドアはハリーのことを見透かしたらしく、楽しそうに笑った。

「子供はそれで良いのじゃよ。本当にしてはならないことをした時に
 諭せば良い」
「……そう、ですね」

ハリーは頷いた。

「分からない時があろうと、成長とともに理解してくれるものじゃ」

長男のジムはその典型であろう。
ハリーの第一子であるため、生まれた時はともかく、ホグワーツに
入学した時には大変な騒ぎだった。
ホームに来た時から注目されてしまい、不安げなジムにあの頃の自分を
重ねて苦笑したものだ。

というのも、彼らの名前の由来になった人たちのことは教えていたが、
ハリーは自らの境遇については何かと教えにくく、いつか話そうと
思っているだけで何も教えられずにいた。

だからこそジムは、自分も有名であることに驚いたのだ。
どういうことなのか、きちんと聞きたかっただろう。
それでもハリーの口が重いことを察したジムは、ハリーの友人に訪ねたり、
勝手に書かれた本などを読んで情報を集めた。

そしてハリーが教える前に、ある程度のことは理解してしまった。

「(――そしてアルも……)」

アルもまた、自らの考えを持って行動していた。
時々見かけるスリザリンの彼とのやり取りは、ハリー自身も驚いている。
あれほど積極的に接触しに行くとは思っていなかった。

「とにかく、あの子たちにとって初めて、ホグワーツで過ごすクリスマスに
 なりますから。楽しんでくれればいいと思います」
「うむ、そうじゃな。わしとしても、そうであれば良いと思っておる」

ハリーはまた一口、ココアを口に運ぶ。
ダンブルドアの穏やかな表情と、毛づくろいする不死鳥、眠る肖像画たち。
ハリーは目を伏せて、束の間の静かな時間を享受する。

自分自身をも、見守られていることに気づいて。





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