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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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進展編-3





本当にこの部屋は素晴らしいと、ジムは感じていた。
自分たちにとって、必要なものがそろった環境の部屋になる場所――
『必要の部屋』とはまさに、自分たちのような者にこそあるべきだ。
この部屋を作ったのが創設者なのか、それとも卒業生なのかは分からない。
とはいえ、先人には敬意を抱かねば。

「そういえば……」

ジムの内心の感動などいざ知らず、のん気な声をあげるのはジェームズだった。

「ジムはクリスマスって帰るのかい?」
「ああ、休暇?」
「そうそう、それも俺聞こうと思ってたんだよな」

ジェームズに便乗して、奥のテーブルで別の作業をしていたシリウスが
振り返る。
数日前、悪戯仕掛け人に『必要の部屋』へと誘われたジムは、
こうして彼らと共に、度々ここへ訪れている。
聞いた瞬間に胸が騒いだ、ホグワーツの地図を作る作業を進めるためだ。
ジムという即戦力が増えたためか、彼らなりに難航していた作業も少しずつ
前進しているらしい。
今は各階を分担し、見取り図に間違いがないか確認している所だった。
そしてあと一週間もすれば、ホグワーツはクリスマス休暇になる。

これはちょうど良い休憩になりそうだ。
『部屋』から紅茶と菓子を取り出し、ジムはそれぞれに手渡す。

「父さんの都合がちょっとね……。僕たちだけっていうのも何だから、
 皆でホグワーツに残るよ」

嘘は言っていない。
未だ『元の時代に戻れない』という、父親を含めた全員の都合のために
ホグワーツに残るのだ。
元の時代でのクリスマス休暇は、ジムもアルも家に帰っていた。
軽く微笑みながら、ジムは肩をすくめる。

「ああ、それもそうか。ハリー先生って9月に着任したばかりだったよね。
 何だかもう、ずっとここにいるような気がしてて……」
「分かる。ハリー先生って、いやテッドさんもだけど、何か馴染んでるよな」
「ぼ、僕たちの悪戯も、どこか楽しんでる、気がするよね?」
「それそれ」

ピーターの言葉にジェームズとシリウスが大きく頷く。
リーマスはチョコレートを口に運びながら、穏やかな表情で微笑んでいる。

実際、ジムの知る限りで、ハリーは彼らの悪戯に口出しをしたことがなかった。
もちろんやり過ぎた時には、きちんと注意していたりもする。
だが、大きな減点を与えたことはない。
減点されたとしても、授業などですぐ点を取り返すジェームズたちだが。

「父さんは、僕の悪戯とか昔から受け慣れてるからね」
「一度も引っかかったことがないのかい?」
「俺たちの悪戯にもまったく引っかかってくれねぇしな」
「悔しいことにね」

自分で知ること以外、何も聞かされていない悔しさもある。
きっと彼らの作ろうとしている『地図』のことでさえ、ハリーは
知っているのだろうと、ジムは推測している。
問いただそうと思ってはいるが、タイミングが巡ってこない。

「ジェームズたちはどうするんだい?クリスマス」

同じ問いかけを返してみると、ジェームズは紅茶を一口飲んでから答える。

「僕はもちろん帰るよ。ただ新年明けたら、すぐに戻ってこようとは思ってる。
 向こうにいるよりはこっちの方が面白いからね」
「俺は残る」
「シリウスは毎年のことじゃないか」
「当たり前だろ」

ジェームズは苦笑するが、シリウスは憮然とする。

「だーれがあんな家に帰るかってーの!夏休みにはだいたいジェームズんちに
 転がり込んじゃいるけど、そろそろ独り立ちも考えてかねぇと」

心底嫌そうにシリウスは吐き捨てる。

「うちは別に構わないんだけれど……アテはあるのかい?」
「……あるっちゃある。……けど、あの人にはあんまり、色々と頼りたく
 ねぇんだよな……。俺のことで迷惑かけたくねぇし」
「ふうん?」

興味深そうにジェームズが首を傾げるが、シリウスは何も言わず黙り込む。
ただ物憂げに溜息をつきながら、クッキーを口に放り込んだ。
シリウスの眉間に皺を寄るのをなだめるように、やんわりとリーマスが
口を開いた。

「僕は25日に帰って、新学期前に戻るつもり。……帰って安心させないと」
「ぼ、僕も、リーマスと一緒だよ」

ピーターもリーマスに続いて、慌てて頷いた。

心配げに、ちらりとジェームズとシリウスがリーマスを視線だけで伺う。
しかしリーマスは、紅茶を飲んで気づかない振りをしている。
ジムもあえて何も問いかけなかった。

「ジムはホグワーツのクリスマス・パーティは初めてだろ?すげぇぞ、派手で」
「もちろん、その派手さには僕たちも関係しているけれどね」
「去年のクリスマス、すごかったよ……色々と」
「……そ、その分、減点もすごかった、けどね……」
「リリーに怒られたよ。とても」

真顔で頷くジェームズに、思わずくすりと笑い声が漏れる。
本当に祖父は祖母に頭が上がらないらしい。

「もちろん、このクリスマスにも準備はするつもりだけどね?」

にやりと笑う彼に、ジムも同じように笑ってみせた。




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