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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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学校編-5





「ふう……」

アルバスは溜息をつきながら、教科書と荷物を抱えて廊下を歩いていた。
思い出すのは、先ほど受けた父親の授業。
父親から宿題など教えてもらうことは多いのだが、教師と生徒という
立場で授業を受けるのは初めてだったため、とても楽しみだったのだ。
そして初めての父親の授業は――何とも。

「本当にびっくりしたなあ……まるで悪戯みたいだった……」

悪戯染みていたのである。

その授業とは、ボガートという真似妖怪の対処方法――といえば、
まだきちんとした授業である。
ハリーは緊張している男子生徒1人を選び、嫌いなものを言わせた。
生徒が答えた名前を訊いた周りの生徒は、酷く納得の表情を浮かべていた。
そして対処の方法と呪文とを教え、何と生徒の前で箱を開けてボガードを
開け放った。
たちまちボガードはスリザリンのネクタイを締めた、根暗そうな
背の高い銀髪の青年の姿へと変身する。
ハリーの合図とともに生徒は呪文を唱え――次の瞬間、銀髪の青年は
フリルがたくさんあしらわれた愛らしいロリータ服を着こなしていた。
それを見た全員は大爆笑。
笑ったおかげで緊張もほぐれたのか、あとの時間はとてもスムーズに
流れて終わった。

アルバスはあとで教えてもらったのだが、ボガードが変身した
銀髪の青年はグリフィンドールを目の仇にし、寮内で最も嫌われている
スリザリンの寮長らしい。

父親がまさかこんな授業をするとは思っていなかったアルバスは、
手伝っているテッドの方を見やるも、テッドはとても楽しそうに
授業を見守っているばかり。

「父さんって兄さんの悪戯には引っかからないのに、悪戯のこととか
 良く分かってるんだよね……」

どうしてだろうと首を傾げて、ふと顔を上げる。
少し先を歩いている生徒に、アルバスは走りよりながら声をかけた。

「すみません、あの、セブルス先輩っ」
「……?」

立ち止まって怪訝そうに振り返ったセブルスは、何度か目を瞬かせる。
そうしてから体ごと振り向き、アルバスが追いつくのを待った。

「み、見つかって良かったです」
「……私に何か用か、ミスター・アルフォード?」
「アルバスでいいですよ! それだと兄さんと一緒になっちゃうので」
「……そうか」

一応納得したように頷いたセブルスに、アルバスは笑って教科書と一緒に
抱きかかえていた荷物をセブルスへと手渡す。

「……これは何だ?」
「貸してもらっていたセブルス先輩のローブです。僕、昨日部屋まで
 持って帰っちゃったので……」
「……ああ」

ローブを受け取りつつ、だから寮になかったのかとセブルスは気がつく。
昨日の夜、新しい教師や生徒に会ったせいでローブのことをすっかり
忘れて寮へと戻ってしまったセブルスは、朝起きた時にローブが見当たらず、
予備のもう一着をトランクから出してきたのだった。

「……わざわざすまなかった」
「いいえ! ありがとうございます。風邪を引かなくてすみました」

にっこりと純真な笑顔を向けられて、セブルスは少し居心地が悪くなる。
するりと外された視線に首を傾げるのは、アルバスのみ。
きょとんとしているアルバスに、セブルスは小さく溜息をつくと
静かに言う。

「……あまり私の傍にいると馴染めなくなるぞ」
「えっと――どういうことですか?」

本当に分からないといったアルバスの様子に、セブルスは少しだけ
驚きに目を丸くする。
しかしすぐに冷静な表情へ戻り、軽く咳払いをする。

「……編入したばかりではまだ分からないかもしれないが、長年、
 グリフィンドールとスリザリンは激しく対立している。何事もなく
 過ごしたいのであれば、うかつにスリザリンには近づかないように
 しろということだ」

その言葉に、アルバスはようやく合点がいったように瞬いた。
アルバスがセブルスに声をかけた時から、立ち止まって話をしている
2人の脇を通り抜けていく生徒たちから、幾度となく怪訝そうな視線を
受けている。
グリフィンドールとスリザリンの対立というものは、年末の寮杯や
クィディッチだけかと思いきや、まさか個人にまで及んでいるとは。

そこまで対立が深いものだと考えていなかったアルバスは、
少なからず衝撃を受けた。
しかし、セブルスから厚意としてそう忠告されたからといって、
今更対立関係を作れるわけがない。
それがたとえ、極力関わらないようにすることでも良いのだとしても。

「セブルス先輩、僕は寮同士の関係に縛られて、個人の友好関係まで
 縛られたくはありません」
「……お前……」
「グリフィンドールだから、スリザリンだから嫌うとか、それって
 おかしくありませんか? その人のことを良く知った上で、僕は
 友好関係を作りたいんです」

きっぱりと言い切ったアルバス。
セブルスは驚いたように見下ろした。

グリフィンドールだからといって、スリザリンだからといって。
驚くのも仕方ないだろう――セブルスは今までのいがみ合いやしがらみを、
そのたった一言で、くだらないと一蹴されてしまったかのような
気分に陥っていた。

いや、確実に一蹴されたのだ。

「だから僕は、周りに何と言われようが構いません」

長年に渡る両者の確執を、未だ幼さが抜けきらない2歳も年下の
この少年によって。
呆れて笑いたくなるような、ありえないと頭を抱えたくなるような、
複雑な心境だ。
セブルスはただ小さく溜息をつく。

自分の発言がどれほど意味のあることか気づいてないアルバスに、
ただ頷くだけだった。




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