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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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学校編-4





どこか複雑な気持ちを抱えながら、ジェームズ、シリウス、
リーマスの3人は中庭の片隅で終業チャイムの音を聞いていた。
3人が3人なりの表情をしているものの、特に複雑そうな表情で、
眉間に眉を寄せて深く考えこんでいるのがシリウスだった。
ジェームズとリーマスが幾度となくちらちらと視線を向けても、
まるで気がついていない。
普段ならば、すぐに気がつくというのに。

「――あれ? ジェームズたちじゃないか。授業にいなかったけど、
 もしかしてサボリかい? 僕もサボるんだったかな!」

ふいに落ちてきた声に、3人は一斉に振り向く。
すると、茂み向こうにある渡り廊下の手すりから、中庭の方へと
身を乗り出して笑っているジムの姿があった。

彼に初めて会った時は互いに自己紹介はしたものの、彼は必死に弟の
アルバスを探していて、それを手伝ったあとすぐ、ジムはハリーたちと
一緒に部屋へ戻ってしまった。
そして今日は、ジェームズたちが朝からずっとハリーに悪戯を
仕掛けようとしていたこともあり、ちゃんと話という話をしたことがない。

「……やあ、ジム。僕たちがいなかった理由は――ハリー先生に
 訊くといいよ」
「もしかして父さ……こほん。ハリー先生に悪戯を仕掛けたのかい?」
「まあね」

リーマスが頷くと、けらけらとジムは笑った。

「あはは、その様子じゃあ失敗したんだろう? ハリー先生は
 ただの一度も悪戯に引っかかってくれないんだ! 息子である
 この僕の悪戯でも駄目なんだからね」

息子、という言葉にシリウスの肩がぴくりと震える。
ゆっくりと視線を上げてジムを見やるシリウスに、ジムはきょとんと
首を傾げた。

「ジム……その、ハリー先生って、マグル育ちなのか……?」
「父さん?」

思いがけないその問いかけに目を瞬かせたジムは、思わず生徒でいる
時間は先生と呼ぶと約束したことを忘れてしまう。
束の間、ジムは不思議そうにシリウスを見ていたのだが、すぐに父親と
何かあったのだろうと察する。

ジムはこの質問にどう答えていいのか迷うが、どこか焦燥するような、
けれど真剣な瞳のシリウスを見て、自分に分かる質問や教えても
平気な質問になら答えることにした。
ひょいっと軽く手すりを乗り越えて中庭に降り立ったジムは、
リーマスの隣へと腰を下ろす。

「そうだよ、父さんはマグル育ち。11になってホグワーツに通って、
 卒業するまで向こうで暮らしてたって言ってたよ。だけど、
 父さんの両親は2人とも魔法使いだからマグルじゃないんだ」
「それは……何か事情が?」
「……世の中、色々物騒だからねえ」

それはジェームズの質問に対して、とてもズレていて曖昧な答え方。
けれどそれが “闇の帝王” に関することだと分かったのか、
3人はそれ以上追及しなかった。

3人が考えたことはもちろん間違いではなく、正解でもない。
ジムとてきちんとした詳細をきちんと知っているわけではないが――
言えるはずもなく。

「それならこっちのこととか、結構知らないとか……?」
「うーん……それは僕もよく分からないな。だけどホグワーツで7年間
 過ごしてるんだし、父さんは結構顔が広い方だから、普通の人よりは
 知ってると思うけど」
「そうなのか……」

ますます怪訝そうに俯くシリウスに、ジムはジェームズを見やる。
ジェームズは苦笑しながら肩をすくめた。

「実はさっき改めて自己紹介をしてたんだけどね……ハリー先生、
 シリウスのことを何も言わなかったからさ。テッド先生にも訊いたけど、
 ハリー先生に訊いた方がいいって言って、教えてくれなかったんだ」
「シリウスがどうかしたのかい?」
「……あ、そういやジムにも名前しか言わなかったんだっけか……
 ブラック家って言えば分かるか?」

ジムの問いに、酷く苦々しい表情をしながら答えるシリウス。
あまり聞きなれないという風体で、ジムは腕を組む。

「ブラック家? えーっとブラック、ブラック……ブラック家って、
 確か――っ」

――父さんの名付け親の苗字。

思わずそう言ってしまいそうになったジムは、すんでの所で何とか
言葉を呑み込んだ。
ジムは頭をフル回転させて、自分の知るブラック家の情報を集める。
そうしてから差し障り無い答え方をした。

「うーんと、確か、結構名の知れた魔法使いの旧家……だったっけ?
 僕自身はあまり知らないけど」
「まあな。名の知れてる部分が真っ当じゃねえけど」
「そこまで言うってことは、シリウス?」
「……本名シリウス・ブラック、そこの長男」

盛大に顔をしかめ、吐き捨てるように言ってのけたシリウスに、
ジェームズとリーマスは苦笑する。
5年前に自分たちと出会った頃によく見せていた、表情と言い方だ。
自分の家のことを心底嫌っていたシリウスは、圧し掛かる肩書きを自ら
口にすることですら嫌っていた。
親友が出来て、この夏にようやく家出をして重圧から逃れたからか、
今でこそ開き直っている部分もあるのだが。

「なるほどね……父さんは知ってるよ、ブラック家のこと」
「本当か!?」
「多分ね。父さんって悪目立ちしたり、噂されたりするのが好きじゃないんだ。
 だから、シリウスのことも騒いだりしたくないんだと思うよ」

父親のその性分を知るのは、不幸なことに家族と友人、恩師のみである。

「それはどうしてなの?」
「父さんも色々大変だったみたいだからね。最も、僕だってそのことは
 良く知らないんだ」

深々とジムは溜息をついてみせる。
ジムたちの祖父母や、彼らにまつわる人たちのことを話してくれても、
父親はあまり自分に関することは語らない。
だからジムは母親や父親の親友に話を訊くか、本などでしか父親のことを
知ることが出来ない。
きっとハリーは自分のことをジムがいくらか調べて知っていると、
気づいているとは思う。

それでも父親から訊きたいと思うのは――息子ゆえの我侭というもの。

「テディが言っていたのは正論だね。本人のことは本人にしか
 分からないってことだから」





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