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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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学校編-6





授業を終えたルーナは、廊下を歩きながらゆっくりと肩を落とした。
難しい魔法のことはよく分からなかったが、父の説明によると、
過去の――それも何度も話してもらった祖父母がいる時代の、
ホグワーツに来てしまったらしい。

きっと1人だったなら、怖くて、どうしようもなくて、めそめそと
泣いてしまっていたかもしれない。
それでも大好きな父や、家族のようなテディ、頼りになるジムと
優しいアルバスという2人の兄たちも一緒だということが、
ルーナの唯一の安心した所だ。

それでも授業が始まってしまうと、ルーナはたった1人になってしまった。
もちろん、ルーナに話しかけてくれる生徒は何人もいる。
悪気はないのだろう、だが、その言動は編入生にに対する好奇ばかりが
目立ってしまう。
彼らに話しかけられる内容は、そのほとんどが質問だ。
ルーナ自身のことも訊かれたものの、質問の多くは、何故この時期の
編入なのか、父は、兄たちはどういう人なのかということ。
ルーナは冷静を装いながらも、必死で何か迂闊な答えを返さないように
気をつけ、当たり障りのないように笑顔を作っていた。
人付き合いの上手いジムのように、さらりと言葉や笑顔が出てこない。
誰に対しても自然体でいるアルバスのように、そのままの自分を
見せることが出来ない。

“対人関係” というものを、あえて良いように立たせたりする経験が
未だないルーナは、上手くメリハリがつけられないのだ。
その上、秘密を抱えながら交わす会話は、ルーナにとって酷く
疲れることだった。

「……パパとテディは夕方までお仕事……ジムお兄ちゃんは今どこにいるか
 分からないし……アルお兄ちゃん、部屋に戻ってるかなあ……」
「ミス・アルフォード?」

溜息をつきながら部屋へ向かっていると、ふいに後ろから声をかけられた。
ルーナが振り向いてみると、そこにはルーナより少し年上の女子生徒が
数人立っている。
緊張に肩を強張らせながらも、ルーナは小さく微笑む。

「はい、何か御用でしょうか?」
「私たちね、ちょっとミス・アルフォードに訊きたいことがあるの」
「そうなのよね」

首を傾げるルーナの前で、女子生徒はくすくすと楽しそうに笑ったり、
お互いの肘を突きあったりしている。
彼女たちのその反応だけで、ルーナはこ何を訊かれるのかすぐに
分かってしまった。
無意識にこぼれかけた大きな溜息に気がついて、慌てて飲み込む。
やがて女子生徒の1人が内緒話をするかのように、少し声を低めて問う。

「貴女のお兄さんたちって、恋人とかいるの?」

その一声につられたのか、周りの女子生徒たちも勝手にきゃあきゃあと
騒ぎたてた。

「私は断然、ジム先輩派ね! 挨拶の時のあのセリフ、たまらないわー」
「あら、アルバスだって可愛いじゃない。初々しくって!」
「ちょっとちょっと何言ってるのよ、助手のトンクス先生が一番に
 決まってるじゃない」

――ああ、やっぱり。

ルーナは何とか微笑みを装いながらも、心の中で盛大に呆れた声で呟く。
家族で末の妹、というポジションであるルーナは、ジムやアル、
テッドに行為を抱く彼女たちからすれば絶好の情報源となるらしい。
実際ルーナがホグワーツに入学した当時も、今のように何度も何度も
質問責めにあったものだ。

そんな風に囲まれて困っていた時は、アルや幼馴染であるローズや
ヒューゴが助けてくれたり、ジムがわざと悪戯をし始めて注目を
集めて助けてくれていた。
たまたま1人だけで困っている時、通りすがりのスコーピウスが助けて
くれたこともある。

けれど、今は誰もいない。
ローブの端をぎゅっと握りしめていると、またもや後ろから声がかかった。

「こら。貴女たち、何をしてるの?」
「えっ?」

少しだけ不機嫌そうに眉根をひそめたリリーが、腕を組んで
こちらを見ている。
戒めるような目線を受けて、女子生徒たちのテンションがしおしおと
下がっていく。

「エ……エヴァンス先輩……っ!」
「まったくもう。いくらジムやアルバスが気になるからといって、
 ルーナを囲んで怖がらせちゃ駄目でしょう?」
「怖がらせたなんて! 別に私たち、そんなつもりは……っ」
「たとえ訊かれているのが家族のことだとしても、名前も知らない
 上級生に囲まれるのは怖くないことなの?」
「…………」

きっぱりとリリーに言われて、ばつが悪そうに俯く女子生徒たち。
それぞれ小さく謝罪を口にしながら、そそくさとその場を離れていった。
さすがにこれにはルーナも戸惑ってしまった。

「大丈夫だった? すぐに助けてあげられなくてごめんなさい」
「あ、あの、あたし、慣れてますからっ」

リリーがきょとんと目を丸くする。

――慣れてる? 違う、間違えちゃった! そうじゃなくって!

思わずつるりとすべってしまった口に手を当てて、
ルーナは大きく首を振った。

「ええっと、違うんです! その、あたし、大丈夫です、ごめんなさい」

慌ててしまい、何だか支離滅裂なことを言ってしまうルーナ。
瞬いていたリリーは、その様子にくすりと笑みをこぼす。

「そうよね、慣れちゃうわよね」
「……え?」
「ごめんなさい。私もね、昔はそうだったのよ。入学した時から
 ジェームズたちと友達だったから、彼らに憧れてる子たちが
 たくさん私の所に来たわ。もう、うんざりするぐらい!」

明るく笑うリリーに、ルーナは唖然とした。

「ああいうのって長くは続かないわ。ちょっとでも時間が経てば
 だんだん落ちついてくるものよ」
「……そうなんですか?」

リリーはルーナに向かってウインクひとつしてみせた。

「あの子たちはミーハーなだけ。本気だったら妹に直接質問だなんて
 間抜けなことしないわ」





END.

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