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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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学校編-13





アルバスたちと別れ、一旦部屋に戻ったジム。
さっさとユニフォームから着替えて、アルバスたちが待っている
大広間を目指す。

「ん? あれは――」

軽い調子で階段を降りていると、ふと目を瞬く。
階下の通路から、こちらへ向かってくるセブルスを見つけたからだ。

セブルスも前方に人の気配を感じたのか軽く顔を上げて、
思わず立ち止まっていたジムに気がつく。
ぱちりと目が合ったジムは、にっこりと微笑む。
少しだけ眉根を潜めたセブルスだが、無言で階段を登り始めた。

「やあ、こんばんは」

すれ違う間際でジムが声をかける。
何も言わずに、見えない振りをして静かに通り過ぎようとしていた
セブルスは、しっかりと顔をしかめる。
しかし無視することなく、セブルスはきちんと立ち止まった。

「……ああ」
「夕食はもう終わったのかい? 早いね」
「……まあな」

渋々という雰囲気ではあるが、セブルスは言葉少なに応える。

ジムがグリフィンドールの生徒であり、かつ悪戯好きということは、
挨拶の時に公言して全校生徒が周知している。
とはいえ、セブルスとしては自分に悪戯の手を伸ばさないジムを、
ジェームズたちと一緒くたには捉えていないのだろう。
その辺りをジムはすぐに察する。

多少意外に思いながらも、その冷静さにジムは感心した。

「アルがいつもお世話になってるみたいだね」
「……そうでもない」
「君のことをよく話してくれるんだよ。アルのこと、よろしくね」
「……お前も、よく分からないな」

楽しそうなジムを見て、セブルスは溜息をついた。

「……私はスリザリンだというのに」

苦々しく呟くセブルス。
それは本当に、理解出来ないというような重みがある声色で放たれる。
思わず、ジムは声を立てて笑ってしまった。

「あははは! もしかしてそれって、アルにも言ったのかい?」
「……はっきりと言った」
「アル、くだらないって言ったんだろう?」
「……まあ、似たようなことをな」
「やっぱりね」

くすくすと笑い続けるジム。
じろりと睥睨するも、セブルスは苦りきった表情を隠さない。
それほど大きな衝撃を受けたことを、セブルスは今でも忘れられなかった。

言い放った言葉通り、アルバスはいつもと同じように行動している。
助言したセブルスから離れることなく、スリザリンを敵視することなく。
セブルスの姿を見かけると声をかけていた。

だがそれは、いつどこでもというわけではない。

アルバスからは簡単な挨拶であったり、特に用事はない時を見計らい、
迷惑にならない程度にセブルスへと声をかけているのだ。
ただの“後輩”として、常識を弁えた態度でセブルスに接している。
目につく行為がアルバスにまったくないため、セブルスとしてもあえて
注意するべき所はなく、邪険にも扱えない。

自らセブルスに関わるアルバスを、他のスリザリン生たちは胡乱げに、
怪訝な目で見やることが多かった。
けれど、ここ最近になって『害のない変わり者』と見定める生徒が
多くなっているのも事実だ。

「……あいつは変わっているな」
「うーん……アルバスは……何というかな」

ジムはアルバスを思い浮かべながら、しばし考えた。
確かに元の時代では、寮生同士の対抗や競争心などはあっても、
敵愾心というものは薄れていた。
それでもジムとしては、アルバスはそれだけではないと思っている。

「アルバスは……色んな意味で素直なんだよ。それでもって、
 かなり頑固者」
「……確かに、頑固だったな」
「うん。特に自分で決めたことには、かなり頑固だよ。元々アルバスは、
 寮生同士の争いなんて気にしてないんだ。むしろ、意味がないって
 思ってるかもね」
「……意味がないだと?」

目を見張るセブルスに、ジムは頷いた。

「そう、アルバスにとっては。競争意識とかなら認めるかな。
 だけどスリザリンだからって、敵愾心を持ったりしないだろうな」
「………………。」

アルバスに言われた言葉を思い出しているのか、ふと黙りこむセブルス。
ジムはゆっくりと目を閉じた。

クィディッチや悪戯の趣味を通じ、ジムにもスリザリン生の友人が多い。
それでも父親の時代の“スリザリン”を話などで色々と知っていた
ジムとしては、最初のうちは色々とわだかまりもあったのだ。

けれど、アルバスは違う。
アルバスは最初から自分の目で、心で、感じたもので選び取る。

そしてアルバスの学校での様子を聞いた父親が、とても驚きながらも、
酷く嬉しそうに笑うのだ。
あの頃はよくわからなかった父の笑顔。
懐かしく思い出しながら、ジムは目を開ける。

「アルバスはね、強いよ。一人の人間としての心が、すごくね。
 兄の僕からすれば、もっともっと頼ってほしい所なんだけど――
 頑固だから仕方ないんだ」
「……心が、強い……か……」

そっと目を閉じて、セブルスは呟く。
ジムはふわりと微笑んだ。

「だから気づいたんだ。きっと――それが必要なんだろうってね」





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