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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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トリップ編-6



 

驚くジェームズたちに手早く挨拶をすませたハリーは、
息子たちを連れてその場をあとにする。
もちろん子供たちが驚いているのは分かっていた。
けれど、誰に聞かれるかも分からないので歩いている間は
子供たちには一切の質問をさせない。

校長室にほど近い場所に建つガーゴイルに、ハリーはあらかじめ
決めておいた合言葉を告げる。
するとガーゴイルは横に飛びのいて、後ろから一つのドアが現れた。
子供たちを先に部屋の中に入れ、ハリーはドアをしっかり閉じる。

「父さん! これってどういう――!!」

ハリーを見上げようとしたジムは、次の瞬間、目の前にいくつもの
星が飛んでいた。
思いっきりハリーからげんこつを落とされたのだ。

「……い、……た、ぁあああ……っ!!」
「……ジェームズ? 物置で遊ぶなら気をつけなさいと、僕は一体、
 どれほど注意をしたんだ?」

ジムがおそるおそる見上げたハリーは、笑顔を貼り付けて
完璧に怒っていた。
静かな声に、ひやりとジムの背筋に冷や汗が伝う。

目線だけでジムは助けを乞おうとするのだが、アルバス、リリーは
まったくの知らん振りをする。
お説教をくらうのは、母親だけで充分だと言わんばかりである。
何事ものらくらと交わせるテッドですら、素早く目を逸らしている。
それほどハリーは本気で怒っている。

「父さん! ごめん、ごめんなさい! 気をつけるから!」
「お前の “ごめんなさい” と “気をつける” は、今日で何回目だか
 分からないよ」

にっこにっこ。
父親の笑顔は止まらない。
ぞくり――。
背筋を駆け抜ける寒気に、ジムはうろうろと視線を彷徨わせた。

しばらくジムを見下ろしていたハリーだったが、ふう……と、
小さく溜息をついた。

「ちゃんと話すから、ほら、ソファに座って。――テディ」
「分かってるよ、兄さん。紅茶でしょう?」
「頼むよ」

子供たちを部屋の中心にあるソファに座らせると、テッドはさっと
ポケットから杖を取り出して振るう。
ハリーの前にはダージリンが、ジム、アルバス、リリーの前には
ミルクティーが、しかしテッドの前には紅茶ではなくマグカップに
なみなみと入ったココアが現れた。

ちらりとそれを見たハリーは、甘党のテッドらしい選択だと思う。

誰に似たのか分からないが、テッドは極度の甘党である。
チョコレートやキャンディなどは常にいくつか持っているし、
紅茶には角砂糖、もしくはミルクをこれでもかというほどに入れるのだ。
母親から受け継いでいる、とある能力のコントロールに費やす
エネルギー補給――と、いえば納得が出来るかもしれないのだが、
どうにもハリーにはテッド自身の味覚の問題だと思えてならない。

温かな湯気が出るそれを飲んで、子供たちはようやく落ちついたらしい。
ハリーは子供たちの表情を眺めるとひとつ息をついた。

「もう分かっているかもしれないけれど、ここは過去のホグワーツだ。
 ……正確に言うと、お前たちの祖父たち、テッドの父親たちが
 通っている時代だ」
「……それってやっぱり……あの時の?」

おそるおそる問いかけるアルバス。

「そう。何の魔法か、道具かはともかく……うちの物置に
 何かがあったのは、間違いないだろうね」

ハリーは盛大な溜息をこぼし、大きく頷いてみせた。
ぎくりと肩を強張らせるジムを、ハリーはじろりと見やる。
するとジムは慌ててぶんぶんと首を横に振った。

「ち、違うよ! 確かに色々集めてはいたけど……さすがにこんな
 大掛かりなことになるような道具なんてなかった!!」
「ということは、小さなことになるような道具はあったんだね」
「うぐ」
「『混ぜるな、危険』 というマグルの言葉があるんだよ、ジム……」

言葉に詰まったジムに、ハリーはもう諦めたような顔をして
そう呟いてみせた。
ひとつひとつの道具としては小さなものかもしれない。
けれど、それらが全て合わさってしまったとしたらどれほど膨大な
魔法になるのやら。

倉庫のガラクタの山を見て推して知るべし、という所だろうか。

「ねえ、父さん。さっきセブルス先輩たちにああ言ってたってことは、
 僕たち、すぐ帰ることは出来ないの?」

もう一度問いかけてくるアルバスに、ハリーは頷く。

「原因が何なのか分からないことには無理なんだ。この時代の
 ダンブルドア――校長先生に話をして、元の時代に帰る手段を
 探す手伝いをしてもらうことになった。その間、僕たちは
 このホグワーツで生活することになったんだよ」
「パパが先生で、テディがパパの助手で、あたしたちが生徒ね?」
「そう。この時代での苗字は “アルフォード” とした。お前たちも
 間違えないように。名前もジム、アルバス、ルーナと名乗るんだよ」

この時代にはまさに、ハリーの両親であり息子たちの祖父母である
ジェームズ・ポッター、リリー・エヴァンスがいるのだ。
安易にポッターと名乗ったら、彼に関する共通点が多く見つかってしまう。
素顔に関しては、バレた時に誤魔化しのきかない変装はやめた。
逆に名前以外を堂々としてみせて、顔立ちが似ていることを
指摘されても 『他人の空似』 なのだと強引にでも貫き通せばいい。
幸いアルバスはジェームズよりもハリーの方に似ているし、
ハリーもジェームズより大人になったがゆえに、未だ子供である
ジェームズと瓜二つということはない。

闇が深く蠢くこの時代では、疑われる要素は一つでも少ない方が
いいだろう。
それはハリーも、ダンブルドアにしても同じ意見だった。

「ちなみに父さんは身内贔屓をする気はまったくないから、
 授業に関してはちゃんと予習しておくこと。いいね?」
「「「……はーい」」」





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