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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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トリップ編-5


※ペベレルは直接的だと判断し、某叔父上の名前を
 もじってみました。




「ちょっ……兄さんってば。もう離して……」
「うん……」

今まであまり見たことがないほどの、深刻な表情のジムに
しっかり抱きしめられていることが妙に気恥ずかしい。
驚きが去ったアルバスは、ようやく周りの沈黙が気になり始めた。
ジムの背中を促すように軽く叩く。
渋々といったような顔で、ジムはようやくアルバスの体を離した。

「あの……兄がすみません」

唖然としてアルバスとジムを見る4人に、居た堪れなくなって
何となく謝ってしまうアルバス。
すると慌てたように、鳶色の髪の青年が手を振った。

「ううん、僕たちは大丈夫だからそんなに気にしないでいいよ。
 良かったね、ジム。無事に家族と会えて」
「ああ、本当にありがとう!! そっちの君も、アルバスを
 連れてきてくれてありがとう」
「……私は別に」

ジムは青年に笑顔を浮かべながら、そのままセブルスを振り返る。
いきなり見知らぬ青年に笑顔を向けられて、
多少居心地悪そうにしながらセブルスは目線を逸らす。

アルバスが様子を見るからに、どうやらジムはアルバスと違って、
グリフィンドール塔の方へ落ちたようだ。
きっとアルバスとセブルスのように彼らに出会い、ここまで一緒に
来たのだろう。

とはいえ、眼鏡をかけているジェームズと呼ばれた青年は階段で
待ち伏せのような行動をしていたことから、ジムと出会ったのは
後ろの2人なのだろうが。

首を傾げていたジェームズは、ふと黒髪の青年に問う。

「そういえばピーターはどうしたんだい?」

その時。
ぴくりと兄が何かに反応したような気がして、アルバスはジムを
不思議に思って見上げる。
しかし、ジムは微動だにもせず彼らの方を見ているばかり。

「ん? あいつ、レポートが終わらねぇってんで、部屋に残ってんぞ」
「なるほど……帰ったら手伝ってあげないとね。このままだと
 次の計画が立てられないし」
「それもそうだな」

アルバスが内心で首を傾げていると、通路の向こうから誰かの
足音がしてきた。
騒ぎを聞きつけて教師でもやってきたのだろうか。

思わず、ギクリとした所で、通路の角から制服を着た女性が現れた。
さらりと流れる赤髪に、アルバスは母親と妹の姿を思い出し――驚いた。
女性の後ろについてきているのは、まぎれもなくその妹である。

「リ」
「っルーナ!」
「アルお兄ちゃん、ジムお兄ちゃんっ!!」

「良かった、無事だったんだね」

思わず名前を叫ぼうとしたジムをギリギリの所で遮り、アルバスが
咄嗟にミドルネームの名前を呼ぶ。
するとルーナも2人に気がついて、女性の後ろから飛び出して思いきり
アルバスの腕の中に飛びこんできた。

ぎゅうっと抱きついてきたルーナは、今にも泣き出しそうな表情。
ルーナの頭を撫でながら、アルバスは女性がルーナの名前に
不思議がっていないかそろりと伺う。
女性は安堵の微笑みを浮かべてルーナを見ている。
どうやらルーナもちゃんと周りの異変を感じていたのか、自分の名前を
『ルーナ』 と教えていたようだ。

「ルーナは大丈夫だった?」
「うん……。ちょっとだけ心細かったんだけど、大丈夫よ。あのね、
 あたし、リリー先輩に助けてもらったの」

アルバスに抱きついたまま、ルーナは振り返る。
リリーと呼ばれた女性はくすりと笑った。

「助けただなんて……そんな大げさなことはしていないわよ。
 廊下で迷っていた所を見つけたから、ここまで連れて来ただけだもの」
「そんなことないですっ! あたし、あんなに暗い廊下にいるの
 初めてだったから怖くて……本当にありがとうございました」
「ふふふ、どういたしまして」

笑顔を向けられた女性は、少し照れたように肩をすくめてみせた。

「ああ、いましたっ!」

急に上から降ってきた聞きなれた声にアルバス、ジム、ルーナは、
ぱっと顔を上げる。
先ほどの青年たちのように、階段を駆け下りてくる姿に笑顔が浮かぶ。

「……テディ……!」
「まったく、心配したんですよ!!」
「それは……」

顔をしかめるテッドに複雑そうな顔をする3人。
心配したのは何もテッドだけではないのに、とも言いたいが
言えないのである。
しかし、すぐに3人はぎくりとして体を強張らせた。

後ろから階段をゆっくりと降りてくる姿に、気がついたからだ。

にっこりと笑顔を浮かべている父親。
物置で見た時よりも笑顔の迫力が増している。
誰も適わないと言われるほどの、本気で怒る一歩手前の表情だった。

「――僕の息子たちが迷惑をかけたね」
「え? あ……いえ」

静かで落ちついたハリーの言葉に、少し唖然としたような
ジェームズが答えた。
それもそうだろう――何せハリーの顔はジェームズと似ているのだから。
ようやくそのことに気がついたのだろう、他の青年たちも唖然としながら
きょろきょろと2人を交互に見比べる。

「と……と……っ……!」
「言いたいことは山ほどあるけれど、部屋に戻ってからにしよう」

階段を降り終えたハリーは、びくつく3人をちらりと見下ろす。
そのあとで柔らかに目を細める。
ゆっくりとハリーは3人以外の生徒たちを眺めた。

「あの……?」

ふう、と小さく溜息をつきながら別の笑みを浮かべ、ハリーはどこか
苦味が混じる微笑みで、生徒たちに答えた。

「初めまして。怪我で辞職した前任の先生から引き継いで、来週から
  『闇の魔術に対する防衛術』 を教えることになった、
 ハリー・アルフォードだ。隣は助手のテッド・トンクス。
 息子たちは上からジム、アルバス、ルーナ。……これからよろしくね」





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