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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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トリップ編-3



 

「……本当に、ここ、どこだろう?」

アルバスは途方に暮れて、何度目か分からない溜息をついた。
覚えているのは棚の下敷きになりそうな兄に、妹と一緒に
慌てて飛びついたこと。
次にぼんやりと目を開いた時には、アルバスはすでにどこかの
通路に1人で倒れていた。

何かの魔法がかけられているのだろうか、アルバスが歩くたびに、
一歩先の通路が次々とランプで照らされるので、一人きりの暗闇を
怖れることはなかった。

しかし。
どれだけ歩いても、一向に通路の終わりが見えてこない。

「もしかして道に迷うような魔法がかかってるのかなあ……。
 でもそれだと、かなり大きい魔法だよね」

アルバスは考えながらも足を止めず、首を傾げる。
ここにローズがいれば、何か良い案が出たかもしれないと
アルバスは思う。
けれど、こんなわけの分からない状況ではきっとローズも困惑して
慌ててしまうだろうと考え直す。

アルバスがこうして冷静でいられるのも、ひとえに物心ついた頃から
兄の悪戯やからかいなどを多く受けてきたからだ。

そうされるたびに驚いたり戸惑ったり。
リアクションが大きければ大きいほど喜ぶ兄の姿を見てきたアルバスは、
もうさほどのことでは驚かなくなってきている。
1人で目覚めた時は驚いたものの、歩いているうちに冷静になった。

兄の集めていた何かの道具が引き金だろう――
その可能性にも気づいた。

「とにかく……ここから出なきゃ何も分からないよね」

さすがに歩き疲れてきて、アルバスは立ち止まって壁に手をつく。



ガコン!!



「え」

手をついた瞬間、壁がへこんでアルバスの体が傾く。
急に傾いてバランスを崩してしまったため、咄嗟に何かを掴んだり
支えたりする暇もなく。
ぐるりと反転する視界に、アルバスは床に倒れる衝撃を悟った。
思わずぎゅっと目を閉じる。

瞬間――。
ぼすんっと床ではない、何かやわらかなものに倒れこんだ。

「……あれ?」

驚いたアルバスは目を開いて、何度か瞬きをする。
目の前に広がるのは白い綺麗なシーツ。
そこから全体をよくよく見やれば、
アルバスは何故かベッドの上に倒れていた。

「お前……誰だ?」
「!」

ふいに聞こえた声にアルバスが振り向くと、本を抱えて怪訝そうに
アルバスを睥睨している青年が立っていた。
一瞬だけ、いつのまに目の前に現れたのかとアルバスは思ったが、
すぐに違うと気がつく。

このベッドが青年のものだとしたら、青年はきっと最初から
そこに立っていたのだろう。
つまり、いきなり現れたのは自分の方なのだ。
体を起こしたアルバスは、ふいに青年の格好に目を見開いた。

「な、何で、ホグワーツの制服?」
「……ホグワーツの平日に制服を着ていない奴はいないだろう」
「えっ!?」

青年の呆れかえるような言葉に、アルバスは見開いた目を丸くする。
よく分からない場所に倒れていたと思えば、自分はよく知る
ホグワーツに飛ばされていたらしい。
もちろん、ホグワーツに移動系の魔法は効かないと知っているので
余計に驚きが増している。

目の前の青年が首に巻いているのは深い緑と灰色――
スリザリンのネクタイだ。
ということは、ホグワーツのスリザリン寮内なのだろうか。

「あ……ご、ごめんなさい! 僕、まさかここに落ちるなんて
 思っていなくて……」

アルバスは慌てて姿勢を正すと頭を下げた。

「……隠し通路でも歩いていたのか?」
「よく分からないんです。気がついたらそこに倒れていたので」
「……そうか」

眉をひそめながらも、青年はアルバスの話をちゃんと聞く。
最初は冷たそうだと思ったアルバスは、青年に好感触を抱く。

もともと、アルバスは寮生同士での対抗意識が薄い。

スコーピウスなどのライバルはいるのだが、アルバスとしては
宿敵という意味合いよりも良き競争相手であると思っている。
それを話すたびにローズの父は 「アルバスはすごい」 と苦い顔で
言っている。

父にどうしてかと聞けば、父の学生時代には寮生の対抗――
特にグリフィンドールとスリザリンの対立は激しかったらしい。

だが、今は寮杯やクィディッチ以外ではあまり対立していないからか、
はたまた性格からなのか、アルバスはいまいち想像しがたかった。

「えっと……先輩、なんですよね?」
「……お前がホグワーツの5年生以下ならそうだ」
「あ、僕は3年のアルバスといいます」
「……私はセブルス・スネイプだ」

聞き慣れた名前に、アルバスは唖然として何度か瞬きをしてしまった。

――セブルス・スネイプ。

それは、父が話してくれる大切な物語の中に出てくる名前のひとつ。
ホグワーツの歴史に名を遺す、勇気ある人物。
己の名前に多大なる意味を持つ1人。

「えっと、スネイプ先輩……?」
「……セブルスで構わん」

セブルスはアルバスの言葉を聞くと、少し気恥ずかしそうに
肩をすくめる。
ほっと安堵しながら、アルバスはどういうことか考える。
目の前にいる彼が父の話に出てくる人物ならば、明らかにおかしい。
誰かちゃんと話を聞いてくれる人を探さなければ。

「あの、セブルス先輩……今日って校長先生はいますか?」




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