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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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トリップ編-2





「――ゆっくり、話を聞かせてもらえるかのう?」
「はい」

ダンブルドアがソファを指し示す。
ハリーは頷いて、驚いているテッドを促した。
先にハリーが座ったことで、テッドも覚悟を決めて隣に座る。
ソファに座ったダンブルドアは、軽く杖を振って三人分の紅茶を出した。
ハリーは紅茶を一口飲んでから話し始める。

「僕たちは、つい先ほどまで自宅の物置にいました。けれど息子が
 棚を倒して……庇ったあと、すでにここにいました」
「ほう……。君の家には、その系統の魔法道具があったのかね?」
「僕には覚えがありません。……ですが、その――上の息子は
 どうにも悪戯が好きでして。知らない間にどこからか道具を
 手に入れたりしているんです」

部屋や物置に隠した道具たちが、母親に見つかって怒られることも多い。
何せ、何度か部屋を破壊しそうになった道具もあるぐらいだ。
今ではジェームズがホグワーツにいる間、ハリーが定期的に物置を
掃除するついでに変な道具はないかと調べているほど。

悪戯道具やよく分からない道具を、
ジェームズが入手するルートはいくつかある。

それは悪戯好きな叔父からの試供品であったり、ホグワーツで見つけた
秘密部屋などで発掘してきたり。
最近では壊れた道具や細かな部品などを使えるかどうか検分して、
色々とガラクタを集めている。

きっと写真でしか知らない祖父たちや、憧れている叔父たちのように
道具を作ろうとしているのだろう。
はああ、とハリーは肩を落として疲れたように溜息をつく。
ハリーの苦労を知るテッドは苦笑いするばかりだ。

「もしかしたらそれが原因かもしれません」
「ホッホッ、元気な子供じゃの」
「……元気すぎるのも困りますけどね。そう、悪戯といえば……
 ダンブルドア先生、もしかしてこの学校にはポッターという子供が
 いるのですか?」

ダンブルドアは静かにアイスブルーの瞳を瞬かせる。
その仕草でハリーは確信した。

「ジェームズ・ポッター、シリウス・ブラック、リーマス・ルーピン、
 リリー・エヴァンス、セブルス・スネイプ……そして……
 ピーター・ペティグリューという子供たちが――」
「っ」

ハリーの酷く真剣な言葉に、ぴくりとテッドの肩が揺れた。
どこか焦燥するようにテッドがハリーを見上げる。
ダンブルドアは一呼吸ののちに、一つ頷いた。

「――彼らは5年生じゃ」
「……僕の名前は、ハリー・ジェームズ・ポッターと申します。
 ジェームズ・ポッターとリリー・エヴァンスの息子です。この子は
 テッド・リーマス・ルーピン。リーマス・ルーピンの息子です」

ダンブルドアはハリーとテッドの顔をじっくりと眺め、頷いた。

「ふむ……似ておるとは思ったがのう」
「ダンブルドア先生、この時代がどんな時代なのか僕は知っています。
 ヴォルデモートのことも」

一瞬だけ冷たい光を放ったダンブルドアの瞳を、ハリーは無論のこと
見逃さなかった。
ゆっくりとハリーは瞳を閉じて、自分の言葉を胸のうちで反芻した。

そう。
自分はヴォルデモートを知っている――。

久しく口にしていなかった名前。
ハリーはその響きがどこか忌まわしく、どこか懐かしく感じた。

忌まわしいのは、
未だあの戦いに怒りと哀しみがあるからだろうか。
懐かしいのは、
あの頃に考えもしなかった憐憫があるからだろうか。

痛みの消えた額の傷跡。
それは未だしっかり刻まれているのに。

「……兄さん!」

横から腕を引かれ、ハリーはふと落ちかけていた思考を浮上させた。
ハリーがテッドを見やる。
するとテッドは複雑そうな表情をしていた。

「テディ?」
「兄さんは胸を張ってもいいんです。だって兄さんは、……っ」

テッドが何と言おうとして躊躇ったのか、ハリーにはすぐ分かった。
すでに戦いから解放されている、もう戦う必要はない、
戦いなどしなくていい。

言葉にされなくてもハリーは分かっていた。

――戦いを終わらせたのは、まぎれもなくハリーなのだから。

それをテッドも分かっているはずだ。
けれど、何かしら不安に思うことがあるのだろう。

テッドが物心を持った頃、ジェームズがまだ生まれる前。
現在ぐらいに世間が落ちつくには、まったく時間が足りていなかった。
ハリーの周りがそうして騒がしかった頃のことを、テッドはしっかり
覚えているのだ。

言葉を続けられずに顔を歪めたテッドの頭を撫でながら、
ハリーは小さく苦笑する。

「ありがとう、テディ」
「……本当に兄さんは俺に甘いです」
「それはもちろん、家族だと思ってるからね」
「はい……」

今でもよく思い出すけれどこうして支えられている。
時折自覚するたびに、ハリーは額の傷の変わりに痛む胸を
抑えることが出来ているのだ。

黙然と二人のやり取りを見ていたダンブルドアは、一瞬目を閉じる。
そして次に開いた時には、もう冷たい光は宿っていなかった。

「では、対策を練ろうかのう」
「ダンブルドア先生?」
「互いに未来から来たことを知られるわけには、いかないじゃろう?」

優しく温かな瞳に、ハリーは目を見開く。
――ああ、やはりこの人は。

「宜しくお願いします」
「ホグワーツへようこそ。ハリー・ポッター、テッド・ルーピン」



ホグワーツ魔法魔術学校の偉大なる校長――
アルバス・ダンブルドアだ。



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