その日、君尋は侑子さんに朝食を作るため泊り込むことになった。
私がベッドから降りた後はちゃんと家に帰っていってたから、
少し久しぶりって感じになるのかな?
食事のほとんどは君尋が作って、私は少し手伝うぐらいだし。
いやでもさあ、君尋のご飯ってすごく美味しいからね……。
うんうん、明日の朝食もかなり楽しみだ!
私はひとつ笑みを浮かべながら、ベッドにそそくさともぐりこんだ。
『まわり見て歩け、阿呆』
『誰が阿呆だー!』
『暴れんな』
『百目鬼! ―― ……それ』
『――開かなくなる病気なんか、聞いたことねぇからな』
『――何か分かるかもしれねぇ!』
『無理だ。おれは――』
「――え」
……今の、何……?
変に速い動悸がする胸を押さえて起き上がる。
背中に冷や汗が伝って、二の腕にぞくりと鳥肌がたつ。
君尋と一緒にいた長身の男の子。
右目を押さえながら、顔をしかめてる場面。
男の子は“百目鬼”って名前で君尋に呼ばれてた。
確か、君尋の話に良く出てくる“むかつく”男の子の名前。
君尋みたいに直接アヤカシを見ることは出来なくても、気の弓矢で
アヤカシを祓うことができるっていう神社の子……だよね。
憤慨する君尋をよそに、侑子さんはいつものように笑いながら、
そのことを良く思わないアヤカシが、2人の仲を悪くさせてるって
言ってたけど……。
何で、そんな2人の夢なんて見たんだろう?
朝日が窓から差し込んできて、部屋が明るくなってきてる。
君尋が持ってきてくれた小さな置き時計は、いつも起きる時間を
少しだけ回ってた。
……あれ……?
もしかしなくても寝坊した?
『今日の夕飯、酒は二合までっす!』
『鬼―――――――――――――!!』
侑子さんの悲痛な叫び声が聞こえてきた。
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