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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

第4章 台風3号 マワルウンメイ(1)





それからしばらく、私はベッドの上の住人だった。

記憶はまったく残ってないんだけど、私ってきっと病気とかに
あんまり関わりない人間だったような気がしてる。
消えた記憶については……昔の“自分”のことについては、
何故かそれほど不安とかは感じていない。
考えごとをしたりするのも、嫌いじゃないしね。

それに、ベッドの上っていうのも中々楽しかったりする。

朝は君尋が朝食を運んできてくれて、侑子さんが挨拶しにきてくれる。
昼はマルとモロとモコナがベッドの横で私と色々話したり、
遊んだりしてて、侑子さんもお客が来ない時は顔を出してくれる。
夕方になれば、マルとモロとモコナに君尋がバイトしながら加わって。
そして夜は侑子さんが、たくさん不思議な話をしてくれたり……。

もちろん侑子さんは、私の“願い”が何だったのか教えてくれない。
でも、私がそれを知るのにはまだ時期が早いとも思う。
誰かに聞いちゃいけないことだと、思うから。

そんな感じで1週間後、私はようやくベッドから降りることができた。
そして、君尋と一緒にここでバイトすることになった。
というよりも、行く所なかったから頼み込んだというか……侑子さんから
言葉なく頼まれたというか?

君尋は深々とため息をついて「ああ、またお客を巻き込んで……」と
ぐちぐち言っていたけれど、助かったのも事実。
――それから数ヶ月が過ぎ。



マルとモロは侑子さんの着替えを持って、支度を手伝っているから、
暇になった私はモコナとしりとり遊びをしてた。
勝つ自信は結構あったけど、モコナもなかなかてごわい。
思っていたよりもまったく勝負がつかないから、思わず時間も忘れて、
2人で白熱した戦いに突入していく。

すると、玄関の方からバタバタと足音が聞こえてきた。
あれ……もう君尋が帰ってくるような時間になってたんだ……。

「こんにちはー」
「“ハネデュー”。お帰り、君尋。……ちなみに侑子さんはお風呂ね」
「げっ! ということは、またガバガバ飲んでるんだな。それじゃあ
 夕飯の分は減らさないと駄目か……」
「“ユーフォーピーチ”。モコナの分は減らすなよー!」
「あははは! さすがだね、君尋! “チェリモヤ”」

しりとりも子供遊びだと思われそうだけど、意外と白熱するものだよ。
知りうる限りの言語の範囲を競い合い、互いに使い使われた言語を常に
覚えておかなければならない。
そこから投げ返していく言語の範囲を絞り込み、相手をじりじりと
追い詰めていく究極の心理戦なんだから!

ちなみに今やってるルールは、最後の“伸ばし”は無し。
だから小さい音が入って伸ばしがあったら、小さい音が先頭。

「……何の話? それ……」
「「お題“果物”」」
「……お題?」

私とモコナの台詞が重なった
頭使う遊びって言うもんだよねえ、ホント。





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