201601/29 第4章 台風1号 ウルサイアマオト(1) 台風トリップ! 0 ――ザァ……ザァ……ザァ……「――そんな……だったのね。それも――けれど……」雨がうるさい。この声を、聞かないといけない気がする。だけど、雨音でとぎれとぎれにしか聞こえてこない。何だか目が上手く開かない。体が強張って動かない。どうして。「名前は?」無意識に口が動いて自分の名前を名乗る。どうしてかが分からない。声はちゃんと聞こえてくるのに、頭に入ってこない。“理解”しているのに“理解”できない。けれど答えなければならないような気がする。それでもまるで理解した瞬間、そのまま静かにかき消えるかのような。私はどうして、こんな風になってる?「ここに―― 貴女の願いは何?」――ザァ……ザァ……ザァ……ザァ……雨は止まない。ああ、音がうるさい。何も見えない――。NEXT. [0回]PR