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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

第3章 台風11号 根源(2)





ヴォイムに案内されてきたその場所で。
私は目を見開いて、息を呑んだ。

「……な、……っ」
「――これで分かったであろ? だから余もこれをこうやって見るのは
 久しぶりなのだが……うーむ、やはりすごい力だ」
「これは……」

独り言のようなヴォイムの言葉は本当だった。
目の前にそびえているのは、きらきらと白銀に光りながらも強固に
凍った巨大な一つの透明な結晶。
中央に鎮座している銀色の石が、きらきらと光沢を放つ。
確かにこれは簡単に“触れる”ことを許しはしない護りの壁だ。



いや……違う。
これはそうじゃない。



私たちの中にある何か、言うなれば本能というものが勝手に、
“触れれば許されない”と思ってしまうんだ。
石の輝きに、石の威厳に、石の存在に、石の全てに。

――力のある石に。

「何なのこれ……? ……すごすぎる……」
「こりゃあ、かなり圧倒されるぜ」
「綺麗ですわぁ……」
「この力は一体――!」

ヴォイムに案内される私を何だ何だとついてきた他の皆も、
あまりの絶大な石の効力に絶句する。
それは悪い意味なんかじゃなく、本当にただ魅入られる。

心が。

魂が、あの光に魅入る。

凍っているけれど、決して冷たくなんてない光。
まるで優しく包みながら見守るような―――まるで静かに微笑むような、
夜空に輝く月明かり。

私は、ゆっくりと瞬いて、石を見つめた。





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