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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

第3章 台風10号 ただ、自己満足ですから(2)





「そういえばセツリ

苦笑げに肩をすくめてた私に、ドロシーが声をかける。
私は軽く首を傾げる。

「んー? 何?」
「どうしてあんなに“母体”に必死だったの?」
「……あー……そのことね……」
「気になってたのよ」

ドロシーと名前を名乗りあった時。
私の接し方は、まったく何もないように普通だった。
それがドロシーの爆弾発言で彼女が母親であると知ったとたん、
私は必死になってドロシーを危険に晒さないようにしだした。

まあ、今となってはちょっと自分でも驚くくらい、ちょっと過敏に
反応しすぎてたかなあ……とも思う。
確かにあんなに慌てたことは、D.グレの世界でも鋼の世界でもあまり
なかったような気がするし。
慌てるというよりも、切羽詰ってたというか?
経験からすれば、もっと冷静に対処とか出来たはず。
だけど、どんなに無自覚でも精神的に重大だったのかもしれない。

そんな風に今更ながらに気づいて、自分に笑えてくる。
私は独り言みたいに、静かに言葉にした。



「……ここに来る前にいた世界で、私は命と同じくらい、すっごく
 大事にしてた子を突然連れていかれた」

――鮮明な姿。

「その子はいつもいつも、私を支えてくれてた可愛い子」

――鮮明な仕草。

「彼女をただの造ったものと思えないほど、大好きだった」

――鮮明な瞳。

「それでも、あの子は連れて行かれた」

――鮮明な声。


何も分からない世界で。
私と、白雪は。





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