軽く笑ってみせると、何故かオーフェンはしばらく黙りこんでから
地面に手をついて体に負担をかけないように立ち上がる。
「……なんとか、生きてたな」
「そうだね」
「みなさんだいじょうぶですかっ!?」
「オーフェン様お怪我はありませんかっ!?」
埋もれたナーガ以外、他の皆はようやく目覚めて起き上がった。
……アメリアが姉と知らずに、ナーガを踏みつけてたようだけどね……。
さてと。
ヴォイムが何か城を崩す前に、何か叫んでたみたいだったけど、
……えーと……何だったっけかな?
ある意味、名前がそのまんますぎるだろ! っていう感じしかイメージ
沸かなかったような気がしたんだけど。
でもまあ予感が当たれば、そんなんなんだろーけどあれだろーけど。
「恐れよぉぉぉぉぉぉっ!」
瓦礫の山を落っことしつつ、目覚めたヴォイムが同じ言葉を
叫びながら立ち上がる。
あー、髪も服も何もかもがボロボロになってて憐れっぽい。
それでも頑張って踏ん張ってる姿勢には、拍手を送りたいと思う。
皆が集める視線の方を見やれば、とてつもなく巨大なものが濃い霧の
向こう側に隠れてる。
「わかったからさっさと話を進めろ。あれは何だ」
「言ったであろ! まずは恐れよっ!」
ゼルガディスの苛ついた問いに、ヴォイムはやっぱりただ怒鳴る。
うーん……恐れよって言われてもね。
あの影が何なのかがまったく分からないと、恐れようもないと思う。
ちらりとリナやオーフェン達を見ると、それぞれ、わけは分からずとも
微妙な反応を返してた。
ヴォイムの声に対して、またまた霧の中で稲妻が走っていく。
「今こそ猛れ雷鳴よっ! うなれ業火よ叫べ嵐よっ! 今宵この時
この場所で、誕生した究極住人――今目覚めるとき!
キーガ! いでませぇぇぇぇい!」
そして花火が爆発して、霧の向こうの影を強烈な閃光で照らし出す。
オーフェンだけじゃなく、私とキースとナーガ以外は全員硬直。
「あああっ! かっこいいっ!」
……してなかった。
そうだね、あのディティールにはアメリアは興奮するよね。
いや何ていうか、アメリアの反応はディティールどうこうというよりも……
演出の仕方とかそっちの方なのかもしれないけどね。
四角い頭と胴体。円柱の手足。はみ出したネジ。
頭のてっぺんの棒の上の赤い球。
胸にはきらめいた赤い文字が張ってあって、言語は何故か日本語で、
しかも微妙に汚い字で 『キーガ』 。
小学校一年生か二年生が、親に手伝ってもらって頑張って作った夏休みの
自由工作を思い出させてくれるよ……本当に……。
でも、キーガとやらを見てると、何でだろう。
室長が作った 『コムリン』 を無性に思い出すよ。
NEXT.