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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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第3章 台風の目 何かを背負うような





「……っ」

くっそ、ぽいものの奴……!!

究極住人が何だのかんだの叫んだ直後の、城の崩壊。
いつのまにか気絶していた事実に悪態をつく。

……ん?

ふいに気づくのは、己の体の違和感。
顔をしかめながらゆっくりと上半身を起こしてみる。

俺とあいつが、何とか瓦礫のでかいのは吹っ飛ばしたとはいえ、
破壊できなかったものは、そのまま頭上に落ちてきたはず。

なのに、体はどこもかしこも痛くないだと……?
傷も負ってなければ、かすり傷さえも。
城が崩壊したショックで、ただ気絶したような感覚?
……おかしいだろ。

周りを見渡せば、バラバラに倒れている自分の知り合いや、
この場所へ来てから良くは知らないが一応知り合った人物たち。
おかしいのは奴らじゃなかった。

落ちているはずの、瓦礫がひとつも落ちてない?

いや、落ちているには落ちている。
ただし落ちているのは、内側から何かに弾き返されたように、
ぐるりと自分たちを丸く囲んだ見えないラインの外にだけ。

ちなみにヴォイムは、ラインの外で瓦礫に埋もれて気絶している。

ふいに、黒や灰色が多い視界に水色の布がちらりと翻った。
振り向けば、ただひとり、ぼんやりと空を見上げてそこにつっ立っている
やつがいた。

確か……ドロシーは 『セツリ』 って呼んでたっけか。

彼女か彼かはまだ良く分からないから、断言は出来ない。
とにもかくにも、ドロシーと一緒にヴォイムの前に進んでいったそいつは
顔も言動も中性的すぎたし、何より自分とは言葉を交わしていない。
俺が目を覚ましたことに気づかないのか。
ただ、じっと空を見続けている。

その横顔を見て、少し目を見開いてしまった。



――まるで、一切の感情が欠落したような無表情。



考えることを許さず、心を無理矢理に抑えこんだような雰囲気。
そして何かを耐えるような、何かを背負うような黒の瞳。
ただ、孤独だけを強いられたような。

「う……ん……?」

気絶から復活したリナという少女のうめき声。
それが聞こえたのか、そいつは初めてぴくりと肩を揺らす。
そして、今まで漂わせていた空気をすうっと溶けるように消して、
くるりと軽い動作と表情でこっちを振り向いた。





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