「……っ」
くっそ、ぽいものの奴……!!
究極住人が何だのかんだの叫んだ直後の、城の崩壊。
いつのまにか気絶していた事実に悪態をつく。
……ん?
ふいに気づくのは、己の体の違和感。
顔をしかめながらゆっくりと上半身を起こしてみる。
俺とあいつが、何とか瓦礫のでかいのは吹っ飛ばしたとはいえ、
破壊できなかったものは、そのまま頭上に落ちてきたはず。
なのに、体はどこもかしこも痛くないだと……?
傷も負ってなければ、かすり傷さえも。
城が崩壊したショックで、ただ気絶したような感覚?
……おかしいだろ。
周りを見渡せば、バラバラに倒れている自分の知り合いや、
この場所へ来てから良くは知らないが一応知り合った人物たち。
おかしいのは奴らじゃなかった。
落ちているはずの、瓦礫がひとつも落ちてない?
いや、落ちているには落ちている。
ただし落ちているのは、内側から何かに弾き返されたように、
ぐるりと自分たちを丸く囲んだ見えないラインの外にだけ。
ちなみにヴォイムは、ラインの外で瓦礫に埋もれて気絶している。
ふいに、黒や灰色が多い視界に水色の布がちらりと翻った。
振り向けば、ただひとり、ぼんやりと空を見上げてそこにつっ立っている
やつがいた。
確か……ドロシーは 『セツリ』 って呼んでたっけか。
彼女か彼かはまだ良く分からないから、断言は出来ない。
とにもかくにも、ドロシーと一緒にヴォイムの前に進んでいったそいつは
顔も言動も中性的すぎたし、何より自分とは言葉を交わしていない。
俺が目を覚ましたことに気づかないのか。
ただ、じっと空を見続けている。
その横顔を見て、少し目を見開いてしまった。
――まるで、一切の感情が欠落したような無表情。
考えることを許さず、心を無理矢理に抑えこんだような雰囲気。
そして何かを耐えるような、何かを背負うような黒の瞳。
ただ、孤独だけを強いられたような。
「う……ん……?」
気絶から復活したリナという少女のうめき声。
それが聞こえたのか、そいつは初めてぴくりと肩を揺らす。
そして、今まで漂わせていた空気をすうっと溶けるように消して、
くるりと軽い動作と表情でこっちを振り向いた。
NEXT.