目の前には気絶から復活したヴォイムが、縄に縛られつつ怒ってる。
どうやら何か思いついたようだけど、何が出てくることやら?
でもこの様子だと、依頼品のことはまだまだ聞けそうにないなあ。
「まさしく究極住人! 神の創造するアートの最高峰となろう――」
刹那に閃いた稲妻にはあんまり身構えなかったけど、
多分……あれもヴォイムの演出なんだろうな。
ヴォイムは、誇らしげに笑みを浮かべながらその名前を叫ぶ。
「来たれ、究極住人キーガよーっ!!」
その声と同時に雷が落ちて世界が揺れる。
……嫌だなあ、この感じ……。
雷とか地震とかには冷静でいられるタチだったのにな。
白雪をどこかへ連れて行ってしまった、白い光なんて大嫌いだ。
私を母さんやエドやアルから引き離した揺れなんか、大嫌いだ。
無神経にイラ立たせられた感情を振り払うように、
私は落ちてくる瓦礫の雨をハリセンで全てを振り払った。
――気がつけば、濃い霧に包まれた空を見上げてた。
『 “戦う” 時は感情に全てを任せてはいけない。常に冷静に身構えて、
相手に心を読ませてはいけない』
『お前は冷静に見えるが “中” は荒れ狂いが激しいからな。
まずは、自分の全てを落ちつかせてから動け』
叔父さんと師匠に言われた言葉が、響くように脳裏に甦る。
……何でだろう……?
ちゃんと分かってたはずなのに、出来てたはずなのに。
どうして、今は記憶が飛ぶほどにやれてなかったんだろうか。
「う……ん……?」
背後から聞こえた呻き声。
ぼんやりとした意識がはっきりとする。
振り向くと、オーフェンはすでに上半身を起こして私を見ていて、
少し離れた所でリナがゆっくり体を起こしてた。
NEXT.