サラリーマンっぽいのと一緒にナーガが張っ倒されて、
ものすごく怖い音とともに、その現況の二つの人影が現れた。
「ううっ!?」
「どひいいいいいいいいいっ!?」
オーフェンとコギーとボニーが、素晴らしいほど引きつった悲鳴を上げた。
現れたドロシーが多いと呟きながら、ヴォイムの方へ向かう。
ヴォイムがドロシーの迫力に圧倒されるのに、
サラリーマンっぽいのが一斉にドロシーに向かって飛びかかる!
私はそれよりも早くドロシーの後ろへ回り込み、腕を振るった。
ドロシーに向かうとは、ちょっと命知らずもいい所だよね。
「連続打法! にのかぜ・旋風の撃!」
パパパパパァアーンッ!!!
私はハリセンで、ドロシーは椅子で。
サラリーマンっぽいのを撃沈、2人で3秒ぴったり。
「……あら、セツリ」
「こんにちは。さっきぶりだね、ドロシー」
「和むでない!! なにゆえお前たちが、余の造りしものを……!?」
「「これ」」
私とドロシーの声が重なって、二人で手に持ってるものを
ひょいっとヴォイムに見せつけてみる。
ハリセンスに瓜二つのハリセンと、どこにでもある普通の椅子。
「……この建て物にあった家具」
「宝物庫にあったハリセン」
「これで殴ったらモロかった。以上」
「 “ヴォイムが造ったもの同士だったら何でもモロい” 」
どすっとドロシーの椅子がヴォイムの顔面に突き刺さって、
その場に落ちるのは沈黙だけになった。
あーあ、ヴォイムが気絶しちゃった。
どうしようか……?
まあ、あとで目覚めた時に聞けばいいかな。
振り返れば、ある意味活気のある惨劇が広がっていた。
ゼルガディスが使っていた落ちていたレンガを受け取ったアメリアは、
すごい勢いで残りのサラリーマンっぽいのを殴り続けてる。
……うん。
アメリアには悪いけど、あの様子はどう見ても正義っぽくない。
暴徒だ。
その隅っこの方ではドロシーに殴られて倒れていたナーガが、
いつの間にか体を起こして、じっとアメリアを見てた。
羽つきの仮面で少し隠れてはいるけど、かなり複雑そうな表情。
――グレイシア=ウル=ナーガ=セイルーン。
……だったっけかな、ナーガの本名?
フィルさんの娘、セイルーン第一王女でアメリアの姉。
黙ってて何も言わせないし、どうやら素性は隠したいみたいだから、
とりあえず私は何も言わずにいることにするけどね。
バラしたらバラしたで、面白そうな展開にはなるだろうけど。
NEXT.