通路先に広がってるホールには、うじゃうじゃとおんなじ顔の
サラリーマンっぽいのがたくさんいた。
うっわーあ。
薄気味悪いの通り越して、もうすごい気持ち悪いよ。
世の中同じ顔が三人だとかドッペルゲンガーだとかも真っ青だね!
むしろ、そっちの方がまだマシなような気がする。
戦況は多分不利。
……なんだろうけど、見ててもこれはかなり意味不明だった。
ナーガが高笑いして半紙がどーのこーのと言ってる横で、
リナたちは思いっきり無視して抵抗してる。
「ふっふっふっ……圧倒的ではないかね? 我が軍は」
「軍だったのか?」
「いーのだっ!」
ヴォイム、あんなに踏ん反りがえって後ろに倒れないのかな?
某忍者の頭領みたいに、頭からドーン! て。
パシンパシン、と手の中の音を軽く鳴らしてみると、良い音が鳴った
さーて、と……。
それじゃあ L 様の依頼品のこと、ヴォイムに直接聞いてみますか。
小さい頃に憧れてた探偵業は、派手な立ち回りだけじゃなく
地味な聞き込みも大事だって言ってたしね!
最初に目指すはリナとアメリアに向かう、サラリーマンっぽいの。
私は体制を低く保ってホールの中へと駆け込む!
「しまっ……!」
「連続打法! いちのかぜ・疾風の撃!!」
ズパパパパァアアアアン!!!!!
さすが良い音、決まったー!!
ふふん、どうやらこれもあのヴォイムが造ったものっぽいし、
こいつらにはちゃーんと効くみたいだね。
「何ぃ!? 余、余の軍隊を吹き飛ばしたと!? ハリセンで!?」
「ああっ! あなたは蓋を開けてくれた人じゃないですか!!」
「は、ハリセン? 蓋って何? てか誰」
ヴォイムは驚愕して、アメリアは目を輝かせてるけど、みごとにリナは
頭に疑問符いっぱいにしてる。
それも仕方ないかな……この状況じゃ。
でもまあ、私的にはハリセンスの技名も思いついたことだし、
ちょっとだけ得した感じかもしれないなー。
「……ん? 音……」
聞き間違いじゃない何かの小さい音を聞きつけ、私は振り返る。
ヴォイムもその音に気づいたみたいで、ぽかんとした表情を浮かべた。
ぐしゃっ、ごきゅ、ざくっ……
めしっ。ごりごりゅっ。ごぢゅりっ。
誰が出してるかは何となく分かるけど。
……すっごい怖い音だね。
NEXT.