「……リナとオーフェン……。それってもしかして、栗色の髪の
女魔道士と、黒の魔術士のことかな?」
「リナのことですかっ!?」
「きっとそうですわ!! もし、あなた! オーフェン様を知って
いらっしゃるんですの!?」
「サラリーマンっぽいのに追いかけられて、ホールの方に走ってったよ」
扉の向こうを指で示す。
すると、何を思ったかアメリアはよじよじと展示物の上に上る。
不安定な立ち位置に足をかけると、ぐっと力強く拳を握って、空……
この場合は “天井” を仰いだ。
何だか彼女の向こうに、熱い炎の幻が見える気がしてくる。
「おのれ、魔王ヴォイム!! 手下どもを使ってリナを追いつめるとは
何て恐ろし、いえ何と姑息な手段か!! 天地に代わってこの正義の
アメリアがそんな悪を断固として許しはしませんっ!!」
今、恐ろしいって本音ちょっとだけこぼしたね、この子。
……それにしても本当に高い所好きなんだなあ……。
ガウリイはアメリアに慣れてるからか見てても何も言わないし、
コギーとボニーも呆れた目でまたかよって顔してる。
「そうと決まれば皆さん行きましょう!!」
「ってどこから行く気よ!!」
アメリアがまたもよじのぼって入ろうとしてるのは、天井に設置された
通気口のような場所。
ようやく入った全力投球のコギーのつっこみに、アメリアが振り返る。
あ、目がらんらんと輝いて……あれは好奇心しか宿ってないな。
私の考えに便乗するように、アメリアは大きく大きく頷く。
「決まってます、天井裏です! 潜入と言えば空か下水道が相場!
突入は真正面からか天井からです!!」
それは相場というよりお約束的展開。
もちろんヒーロー物。
「地下水路から今度は天井裏って……カビと埃が万年ラブラブ新婚生活の
家で足が8本で毛むくじゃらがシュルシュル」
「でも、下水と一緒であまり汚れていませんわよ? 喉もまったく痛く
ありませんわ」
コギーは泣く泣く、ボニーはすでに慣れたように、ガウリイにいたっては
これまたやっぱり何も言わずに、アメリアのあとに習って通気口に
入って行った。
ただ1人残された私は、この宝物庫を諦めて部屋を出た。
ヴォイム、ナーガとキース、リナとオーフェン、アメリアとガウリイと
コギーとボニー、ゼルとドロシー……。
何の偶然ともなしに、集められた全員がホールに行くようになってる。
やっぱりそういう運命なのかなあ?
まあ、多分そんなもんなんだろうけどね……。
「うん?」
そういえばアメリア、 “リナ” って言ってたっけ?
アニメでは確か “リナさん” って呼んでたはずだったから、
この世界のアメリアたちって、もしかすると原作バージョンなのかな?
そうなると、オーフェンたちも原作バージョンってことになるかも。
「……まあ、どっちでも困りはしないか」
どっちにしろ私はアニメのオーフェンを知らないしさ。
私はのんびりとホールに向かって歩き出した。
NEXT.