「栗色の髪の……女魔道士……か……」
「ふうん。黒い魔術士ね」
「城の構造からして、ホールは向こうの方だと思うんだけど」
さっと指を指して、通路の先を示す。
すると2人は頷いて、床に置いていた椅子と石を掴む。
……やっぱり武器はそれでいくんですね。
でも2人のおかげでこの城、というより、この世界のものは
この世界のもので壊せるってことが分かった。
きっと別の所から持ってきた異世界の力は全然通用しないけれど、
この世界のものなら何でも通用するっていうことなんだね。
うん、少し考えれば分かるかもしれない。
それにヴォイムは、リナとオーフェンの攻撃で焦げてた。
ということは、ヴォイムはサラリーマンっぽいものとはまた別。
「あんたも一緒に来る?」
「え?」
考えに浸っていた私を、椅子を持って歩き出そうとしたドロシーが
ふいに振り返って問いかける。
おやおや……ドロシーに誘われちゃったよ。
私は肩をすくめて、苦笑しながら軽く手を振った。
「私は依頼品探すから遠慮しとく。大丈夫だとは思うけど、向こうには
悪の女魔道士と変態執事がいるから気をつけてね。ああ、それと……
私はセツリ・ナカノ。次に会った時はぜひ名前で呼んでくれると
嬉しいよ、2人とも」
「そう、変態執事、ね。……ドロシー・マギー・ハウザーよ。呼び捨てで
かまわないわ」
「……俺はゼルガディス=グレイワーズだ」
「それじゃあ」
何というかゼルガディスとドロシーってある意味
クールで最強なタッグですね!
扉ごしに中の様子を探ると、人がいる気配はしなかった。
カチャリ……と静かに扉を開ける。
薄い暗がりにするりと体を忍び込ませ、扉を閉める。
この世界の管理者であるヴォイムもサラリーマンっぽいものも、
全員がホールに集まってるだろうから、まあこんな真似しなくても
良かったのかもしれないんだけどね。
ようはあれだ、スパイみたいな気分だよ。
何ごとも気分が大事!!
私が今いる場所は、ドロシーたちと別れたあとにしばらく歩き回って
ようやくの思いでたどり着いた宝物庫の中。
一歩踏み出して、手を軽く前に差し出す。
「ライティング」
うん、本当はルーモスとかでも良かったんだけど……やっぱり
今の格好的にはこっちかな~。
照らされた部屋の中には、結構整頓された空間だった。
物は多く置かれずに、むしろ綺麗に展示してあるかのよう。
ひとつひとつ調べてみるけど、 L 様に頼まれた依頼品は見つからない。
むしろ……何だか微妙なものや、知らないものばかり。
しかも、どれもこれも趣味が良いのか悪いのか分からない。
「うーん……? 宝物庫ってここだけじゃないのかも。……いや、
それとも宝物庫にないのかもしれない……?」
ドロシーじゃないけど、城の中を全部見回るのは面倒なことだ。
それに本物のスレイヤーズの世界だったならともかく、こんな知らない所で
あまり時間はかけたくない。
何せタイムリミットのことがあるから、どこまで時間をかけていいのか
分からない。
L 様なら待ってくれそうな気がするけど……それでもね。
……依頼品が城になかったら、どうしようか。
「ふむ……」
NEXT.