わけの分からない場所へ、突然つれてこられて。
わけの分からない場所に、あった城もどきの中に入って。
わけの分からない場所の、もの同士だったら案外モロくて。
ドロシーは淡々としていた。
怒りでもなく、呆れでもなく、淡々と。
それでもいつもとは違う感情であることには変わりなく。
1番目に会った人物はかなり印象的だった。
何せ人間か化け物か分からない人物であったから。
だが、何故か誰よりも、2番目に会った人物こそが印象に残った。
ゆるやかな黒髪と、曇りのない黒い瞳。
見たことのない格好はゼルガディスと似ていた。
顔はどちらかというと中性的かしら。
最初は、こっちを驚いたような目で見てきた。
話しているうちに、彼女は頭が良いことが分かった。
それに話し方や態度で、垣間見えてくる性格も悪くないことも。
むしろドロシーに珍しく好感を持たせるくらいに。
気がついた時には言葉を発していた。
「あんたも一緒に来る?」
彼女はどことなく嬉しそうにしながらも、苦笑して手を振る。
顔には出ていないけれど、ふと興味がわいてきた。
……探している依頼品って何なのかしら。
「私はセツリ・ナカノ。次に会った時はぜひ名前で呼んでくれると
嬉しいよ」
「ドロシー・マギー・ハウザーよ。呼び捨てでかまわないわ」
いつもなら、初対面の人物に絶対言わない言葉。
彼女を前にしていると出てくるのはどうしてだろうか。
それはまるで、瞬く間に色を変えるカメレオン。
すぐさま景色に溶け込んでいく保護色。
そこにあるのが当たり前の空気。
……興味、あるわ。
NEXT.