「――誰だ?」
「……あんたはこの建て物の住人……?」
「は? ああ、えっと、とりあえず違いますよ。私はただ依頼をされて
この場所に来て、ちょっと迷ってたというか……」
「少なくともあんたの所の人間かしら」
私が身に着けてるショルダー・ガードやらマントやらをひとしきり
眺めたドロシーが、ゼルガディスを見る。
ゼルガディスもじっと私の装備を見てから、静かに頷いた。
「多分そうだろうな」
「んー、私は良く分からない上でここに飛ばされてきたから、別に
そういうのは気にしなくていいんじゃないかな? 私は頼まれた
依頼品を探してるだけだし。……どちらかといえば、この城の
住人にとっては敵みたいなものだと思うよ」
「あらそう」
確かに依頼人はゼルガディスの世界の創造主である L 様だし、
この格好も L 様が用意してくれたものだし。
スレイヤーズの世界から来てると思われても仕方ない。
ヴォイムの敵になるっていうのも、極端に分かりやすくしただけ。
この “城の中” にあの依頼品があるなら、私はヴォイムの許可なんて
得ずにそれを持ち出すことになるからって話だけど。
断られても持ってくけど。
「……依頼品? あんたはトレジャー・ハンターなのか?」
「いや、そういうのとはまったく違うよ。私はただそれを探して、
依頼人に届けないといけないだけだからね」
「……区別がつかん」
「私利私欲が入るか入らないかとか?」
「あんた、この建て物の住人がどこにいるか知ってる?」
ドロシーが、やる気なさそうにしながら聞いてくる。
それに対して私は真面目に答えた。
「そうだね……多分ホール、かな。この城にたくさんいる同じ顔の
サラリーマンっぽいのに追いかけられて、ここに連れてこられたらしい
栗色の髪の女魔道士と黒髪の男の魔術士がそっちに走ってったから」
私がそう答えると、ゼルガディスは言葉につまりながら眉をよせ、
ドロシーは少しだけ切れ長の目を細めた。
それはどうにも微妙な雰囲気をかもし出してて、内心苦笑した。
NEXT.